年末年始の休暇が始まって、久しぶりに三省堂書店 神保町本店(小川町仮店舗)に寄って本をあれこれ物色していたところ、気になる三冊の本を見つけました。衝動買いをしたくなる心をグッと抑え、帰宅してから Amazon.co.jp で Kindle 版を買いました。
- インテル8080伝説 (2017-02-20)
- 鈴木哲哉 著
- 978-4-89977-453-2
- モトローラ 6800伝説 (2017-12-22)
- 鈴木哲哉 著
- 978-4-89977-472-3
- ザイログZ80伝説 (2020-08-24)
- 鈴木哲哉 著
- 978-4-89977-481-5
MZ-80K2E で始まった PC とのおつきあい
高校生だっところのことですから、ずいぶん昔のことになりますが、当時はまだマイコンと呼ばれていた「パーソナルコンピュータ」をはじめて買ったのは、SHARP MZ-80K2E [1] でした。搭載されていた CPU は、当時のパソコンで多く採用されていた 8bit の Zilog Z80 のセカンドソース品、SHARP LH0080(2MHz で動作)でした。ゲームやりたさで無機質な機械語入力に励んでいました。インターネットで情報を収集できる時代ではなかったので、Z80 関連書籍を買い漁りました。おかげで、Z80 の命令セットもすっかりおぼえてしまいました(当時)。
閑話休題、思い出話を語り出せば延々と続くので、ここで止めておきます。🤭
そんなわけで Zilog Z80 の開発にまつわる話は多少は知っている気になっていますが、それより世代が少し前の Intel 8080 や Motorola 6800 については、ほとんど知らなかったので、この機に三冊まとめて読んでしまおうと考えたのでした。
教科書的ではないおもしろさ
これらの本は、「今」の視点で当時のエピソードを紹介するスタイルを取っています。その内容は実に詳細です。単に事実をまとめた教科書的な記述ではなく、当時の熱い「事情」も語られています。
「インテル8080伝説」の「はじめに」に書かれているように、当時の出来事を、資料に照らし、技術的に検証し、なるべく正確に紹介しようとする姿勢が三冊を通じて感じられるので、とても好感が持てます。きっと膨大な資料に基づいているんだろうなと思われる大変多くの関連エピソードがちりばめられており、実に楽しく読めました。
今だからなるほどと思うことも、その当時ではなかなか判らなかったという、そんな内容が満載です。あとになって振り返ることで良く判るということがあるものです。それに Z80 について多少は知っているつもりになっていましたが、知らないことばかりでした
例えば、今ではなかなか考えられないことですが、当時のセカンドソースの存在は、安定供給するためには必要だったこと、そして、Z80 の場合は、競合の Intel と Motorola がどちらも米国企業だったことから、セカンドソースを日本とイタリアの企業に求めたことを知りました。いままで、セカンドソースの存在は、なんとなくネガティブに捉えていました。そもそも、開発当時、半導体製造ラインを持っていなかった Zilog の Z80 は、Mostek で製造されていたことすら知りませんでした。
こうして三冊をまとめて読むと、8080, 6800, Z80 それぞれのエピソードが少なからずどの本でも重複していましたが、それが却ってそれぞれの状況を時系列的に確認することにつながりました。特に 6800 の開発視点で語られるエピソードは初めて知ることばかりで新鮮でした。また 6800 では、1975 年ごろに、製造プロセスにイオン注入工程が導入されたことを知りました。
※ 自分は 1988 年に大学を卒業して、今は社名が消滅してしまった某半導体デバイスメーカーに入社しましたが、もちろんイオン注入工程はフツーにありましたので、当時は、それがいつから、ということを考えたことがありませんでした。
著者は、当時の CPU(あるいは同等品)および周辺チップを買い集め、CPU ボードを設計し、Tiny BASIC を走らせることまでやっています。すごいです。😮
当時はパソコンのスイッチを入れると、まず BASIC が起動するのが一般的だったことを懐かしく思い出しました。
Z80 の末裔
Z80 を開発した Zilog 社は現在、Littelfuse 社の傘下に入っています。1976 年に発表された Z80 は今も製造され、FPGA の IP コアでも利用されているそうです[Wikipedia より]。また Z80 とバイナリ互換な eZ80 があります。
この eZ80 は、テキサス・インスツルメンツ社が製造するグラフ関数電卓、TI-84 Plus シリーズに搭載されています。Wikipedia によると、このシリーズの電卓は米国ののグラフ関数電卓市場で高いシェアを占めているそうです。
参考サイト
- MZ-80K2E | 計算機室
- 回路保護、ヒューズ、電力制御、センサーソリューション - リテルヒューズ
- Zilog
- TI-SmartView™ Emulator Software for the TI-84 Plus Family - Texas Instruments - US and Canada
にほんブログ村
#オープンソース
0 件のコメント:
コメントを投稿