2020-09-17

Linux で利用できるオフィススイート

Microsoft Office が文書を扱うアプリケーションのデファクトスタンダードになっている現在、Linux をデスクトップ用途に使おうとする場合、この点が最も大きな問題になります。

Microsoft Office が Windows と MacOS にしか対応していない以上、Linux では Microsoft Office のファイルを扱えるアプリケーションを使うしかありません。Linux 上で動作する、Microsoft Office のファイルを扱えるアプリケーションと言えば、かつては OpenOffice.org しか思い浮かばないような時期もありましたが、現在ではいくつか選択肢があります。

Linux 上で動作する Microsoft Office のファイルを扱える、下記のオフィススイートについて、簡単な比較をしてみました。

Linux で利用できるオフィススイート

使用した OS は下記の通りです。

Ubuntu 20.04 x86_64

※ 日本語 Remix 版は使用していません。

サンプルに使用したサンプル文書

サンプルに使用した文書は、下記の Microsoft のサイトからダウンロードしたファイルを使用させていただきました。対象は Word, Excel および PowerPoint の文書の三種類です。

LibreOffice

LibreOffice は、The Document Foundation のプロジェクトが開発している自由・オープンソースソフトのオフィススイートです。商用ソフトであった StarOffice をオープンソース化した OpenOffice.org(2011 年終了)から 2010 年に派生したプロジェクトです。

LibreOffice は、Microsoft Windows、macOS、Linux やモバイルの Android、iOS といった多様なプラットフォームの利用に加え、オンライン上で利用できる LibreOffice Online も用意されています。主要な Linux ディストリビューションでは標準のオフィススイートとしてインストールされます。

ライセンスMPL v2.0
Wikipedia より引用、編集

LibreOffice は OpenDocument Format(ODF)を標準の文書形式としていて、Microsoft Office の文書フォーマットも扱えるオフィススイートです。

構成

LibreOffice の構成
文書作成Writer
表計算Calc
プレゼンテーションImpress
ベクタードローグラフィックDraw
データベースBase
数式作成Math

インストール

Ubuntu Software (snapcraft.io) からインストールしました。バージョンは 7.0.1.2 です。

Ubuntu Software からインストール

サンプル読み込み

Writer で読み込んだ例
Calc で読み込んだ例
Impress で読み込んだ例

WPS Office

WPS Office は、中国のソフト開発販売会社金山軟件の合弁会社であるキングソフト株式会社のオフィススイート製品です。Microsoft Office に類似したユーザインタフェースと操作性、Microsoft Office との高いファイル互換性を特徴としています。

ライセンス プロプライエタリ
Wikipedia より引用、編集

WPS Office は、Deepin で標準のオフィススイーツに採用されています [2]

構成

WPS Office の構成
文書作成WPS Writer
表計算WPS Spreadsheets
プレゼンテーションWPS Presentation
ベクタードローグラフィック-
データベース-
数式作成-
PDFビューアWPS PDF

インストール

Ubuntu Software (snapcraft.io) からインストールしました。バージョンは 11.2.0.9505 です。

Ubuntu Software からインストール

サンプル読み込み

日本語入力に関しては WPS Writer でやや使いにくいところがありますが、なんとか使えそうです。

WPS Writer で読み込んだ例
WPS Spreadsheets で読み込んだ例
WPS Presentation で読み込んだ例

設定でメニューなどの言語の選択ができますが、残念ながら「日本語」の選択肢がありませんでした。

言語設定のダイアログ

SoftMaker FreeOffice

SoftMaker FreeOffice は、ニュルンベルクに本社を置くドイツの企業 SoftMaker Software GmbH によって 1987 年から開発されたオフィススイートの無料版です。

ライセンス プロプライエタリ
Wikipedia より引用、翻訳・編集

Manjaro のインストール時に、インストールするオフィススイートを選択できるようになっており、選択肢のひとつが FreeOffice になっています [3]

構成

FreeOffice の構成
文書作成TextMaker
表計算PlanMaker
プレゼンテーションSoftMaker Presentations
ベクタードローグラフィック-
データベース-
数式作成-

Ubuntu Software で見つからなかったので、下記サイトから deb パッケージをダウンロードしました。

以下のようにしてインストールしました。

bitwalk@ubuntu-pc:~/ダウンロード$ sudo apt install ./softmaker-freeoffice-2018_978-01_amd64.deb
[sudo] bitwalk のパスワード: 
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
...
(途中省略)
...
desktop-file-utils (0.24-1ubuntu3) のトリガを処理しています ...
bitwalk@ubuntu-pc:~/ダウンロード$ 

サンプル読み込み

日本語入力について、とりあえず入力できるものの、変換候補のリストが表示されるキャレットがとんでもないところに表示されたり、変換結果の一部の漢字しか表示されなかったりと、使い心地は決して良くはありません。また TextMaker で読んだ Word 文書のレイアウトが一部崩れていました。

TextMaker で読み込んだ例
PlanMaker で読み込んだ例
SoftMaker Presentations で読み込んだ例

ONLYOFFICE Desktop

ONLYOFFICE は、ラトビアのリガに本社を置く Ascensio System SIA 社によって開発されたフリーソフトウェアのオフィススイートです。オンライン文書エディタ、文書管理のためのプラットフォーム、企業のコミュニケーション、メールやプロジェクト管理ツールを備えています。

ONLYOFFICE は、SaaS またはプライベートネットワーク上で利用することを想定しています。システムへのアクセスは、プライベートなオンラインポータルを介して提供されます。

ONLYOFFICE Desktop はクロスプラットフォームに対応したオフライン版でオープンソース・ライセンスで無料で配布されています。ポータルの Nextcloud または ownCloud へ接続した場合の共同編集機能をサポートしています。

ライセンスAGPLv3
Wikipedia より引用、翻訳・編集

ONLYOFFICE Desktop は Linuxfx 10 のオフィススイートに採用されています [4]

構成

ONLYOFFICE の構成
文書作成(DOCUMENT)
表計算(SPREADSHEET)
プレゼンテーション(PRESENTATION)
ベクタードローグラフィック-
データベース-
数式作成-

Ubuntu Software (snapcraft.io) からインストールしました。バージョンは 5.6.4 です。

Ubuntu Software からインストール

サンプル読み込み

残念ながら、日本語入力ができません。日本語入力が必須の場合は論外ですね。😅

ONLYOFFICE (DOCUMENT) で読み込んだ例
ONLYOFFICE (SPREADSHEET) で読み込んだ例
ONLYOFFICE (PRESENTATION) で読み込んだ例

設定でメニューなどの言語の選択ができますが、残念ながら「日本語」の選択肢がありませんでした。

設定 (Setting) 画面の言語設定の選択肢

クラウドにアクセス

クラウドへのアクセスが ONLUOFFICE の機能に統合されています。下記は、NextCloud にアクセスした例です。

NextCloud へのアクセス (1)
NextCloud へのアクセス (2)
NextCloud へのアクセス (3)

ONLYOFFICE パートナー企業に日本企業が数社含まれていますので、ONLYOFFICE Desktop で日本語メニューが選択できませんが、有償のオンライン版では日本語が選択できるのかもしれません。

まとめ

自分の場合、業務で扱う文書が英語であるため、日本語対応ということをあまり気にしていませんでしたが、いざ調べてみると意外と問題が多いことが判りました。日本語入力という点では唯一 LibreOffice が問題なしと言えますが、Microsoft Office との操作性の違いが大きく、悩ましいところです。業務で作っている PowerPoint の資料を LibreOffice の Impress で作ろうとすると、操作性の違いに悩み、ストレスが溜まったことを経験しています。要は慣れなのですが、かくも Microsoft Office が業務に浸透していることを思い知るのです。

英語圏のユーザーであれば、Microsoft Office の操作を意識して開発されている、他の選択肢でもあまり問題なさそうですが、日本語を考慮に入れるとなかなか良いのが無いというのが現状です。

個人的には、クラウド環境と密に連携が取れそうな ONLYOFFICE に興味があるのですが、Desktop 版で日本語入力ができないのがとても残念です。Windows 版でどうなのか調べてみたいと考えています。

ちなみに、日本語入力は Ubuntu をインストールしたときの設定のままです。

設定の「地域と言語」の画面

参考サイト

  1. LibreOfficeだけにある10の素晴らしい機能 - LibreOffice日本語チームBlog [2020-02-19]
  2. bitWalk's: Linux ディストロ探訪(6) 〜 Deepin 〜 [2018-12-13]
  3. 安定でシンプルで分かりやすい人気のLinux『Manjaro』のインストールと日本語設定について : ナナッキーのLinux紹介〜脱Windows〜 [2020-01-12]
  4. bitWalk's: Linux ディストロ探訪(20) 〜 Linuxfx 〜 [2020-08-31]

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