ブラジル生まれの Linuxfx のデスクトップ画面は、まるで Windows 10 です。テスト用のノート PC に Linuxfx 10.6 WS LTS beta3 をインストールしましたので、そのデスクトップのスクリーンショットを下記に掲載しました。ここまで露骨に似せると Microsoft から著作権侵害で訴えられるんじゃないかと心配になります。まあ、自分が心配しても仕方がありません。😅
Windows のロゴ(のようなデザイン)が表示されていて、同じような UI だと、まるで Windows だと思ってしまうのは、それだけ Windows が普及しているからでしょう。
あらためて Windows のデスクトップ画面を見てみます。我が家に一台しかない Windows PC のスクリーンショットを右に示しました。
こうして比べると Linuxfx のデスクトップは Windows 10 のデスクトップに良く似ていますが同じではないことが判ります。それにしてもスタートボタンの ⊞ マークまで同じようにしてしまって大丈夫なのかとは思いますが…。😅
Linuxfx それとも Windowsfx?
ブラジル版の Wikipédia によると、最初のバージョンは 2007 年 1 月に Rafael Rachid 氏によって作成され、その後 Linux コミュニティによって改良されているとあります。
リリース履歴とデスクトップ環境などの情報を Wikipédia と Distrowatch.com から集めました。リリース履歴によると Linuxfx 10 のコードネームが Windowsfx ということです。
released version | code name | released | desktop | office suite | /tr>
---|---|---|---|---|
Linuxfx OS Level 1 | Xtreme 1 | 2007 | ||
Linuxfx OS Level 2 | Burntux | 2009 | ||
Linuxfx OS Level 3 | Xtreme 2 | 2010 | ||
Linuxfx OS Level 4 | Green Hill | 2011 | ||
Linuxfx OS Level 5 | Devil OS | FEB 2012 | ||
Linuxfx OS Level 6 | Ghost OS | 26 OCT 2012 | ||
Linuxfx OS Level 7 | Ghost OS | 24 APR 2014 | KDE | LibreOffice |
Linuxfx OS Level 8 | ctOS LTS | 01 JUL 2017 | KDE Plasma | WPS Office |
Linuxfx OS Level 9 | ctOS LTS | 10 MAY 2018 | KDE Plasma | WPS Office |
Linuxfx OS Level 10 | Windowsfx | 01 APR 2020 | Cinnamon | OnlyOffice |
Windowsfx という名前は Linuxfx のコードネームに過ぎませんが、このリリースでデスクトップ環境を KDE Plasma から Cinnamon へ変更して、本格的に Windows ライクな Linux を目指すようになったのでしょうか、windowsfx.org のドメインをとってホームページを公開していることから、Windowsfx という名前を大変重視していることが見て取れます。
Windowsfx 10 LTS に記載されている、主な技術仕様は以下の通りです。
バージョン | WINDOWSFX 10.5 WX DESKTOP LTS |
ベース OS | Mint 20 / Linuxfx 10 LTS |
デスクトップ環境 | Cinnamon 4.6 + Linuxfx WX Desktop |
カーネル | 5.4 |
オフィススイート | OnlyOffice 5.6 |
ワークグループネットワーク | SAMBA |
Active Directory | PowerBroken (PBIS) / CID |
.exe/.msi | Wine 5 (Linuxfxバージョン) |
Windows® 10 テーマ | b00merang GPL Themepack |
Windows® 10 ツール | Linuxfx WX デスクトップシステムツール |
Cinnamon をデスクトップ環境に採用している Linux Mint 20 をベースとしており、リポジトリは Ubuntu 20.04 のものも利用しています。
インストール
Linuxfx のインストーラは、Ubuntu の Ubiquity が採用されており、特に難しいところはありませんが、仮想マシン上にインストールした際のスクリーンショットを順番に示しました。
仮想環境 (GNOME Boxes) で Linuxfx の iso ファイル linuxfx10.6-beta3-wx-lts.iso を読み込むと、ライブで Linuxfx が起動します。最初に画面の解像度を設定するダイアログが出ますので、適切な解像度に設定します。
AI アシスタント風の Helloa の右下の Next ボタンをクリックして、インストーラまで進めます。
言語、キーボードレイアウトなどを選択し、インストールの設定を進めます。
以上でインストールは終了です。
最後にインストールメディアを取り出して終了です。
再起動後、まるで Windows 10 のログイン画面が出ますので、設定したアカウントでログインします。ログイン後、画面の解像度からはじめて、一回、再起動をすることになります。
こんなに Microsoft Windows に似せて大丈夫なの?
Windows のロゴマークやデスクトップの背景が Windows に酷似しているのは、b00merang(ブーメラン)プロジェクトの成果を利用しているためのようです。
b00merang(ブーメラン)プロジェクトのサイトには下記のような説明がされています。
カスタマイズの自由 (freedom in customization)
私たちは、Linux デスクトップの過去と現在の外観を再現する開発者のグループです。
また、Linux デスクトップがどのように見えるべきかについても独自の解釈をしています。私たちはそれらのテーマを b00merang パックの一部としてリリースしています。
私たちが大切にしていることの一つは、Free Software Foundationが定義するソフトウェアの自由です。私たちはテーマを公開し、ソースコードを変更したり配布したりしたい人は誰でも利用できるようにしています。
私たちのテーマのほとんどは GPL v3 でライセンスされていますので、あなたは自由に使用したり、変更したり、友達と共有したりすることができます。
GPL ライセンスに従ったソフトウェアだからと言っても、他のソフトウェアの権利を侵害していないとは言えないのですが、2015 年から活動しているプロジェクトで今迄大きな問題が生じていないように見受けられます。
ONLYOFFICE
Linuxfx 10 ではオフィススイートに ONLYOFFICE が採用されています。
Wikipedia によると、ONLYOFFICE は、ラトビアのリガに本社を置く Ascensio System SIA 社が開発したオフィススイートです。オンライン文書エディタ、文書管理のためのプラットフォーム、企業のコミュニケーション、メールやプロジェクト管理ツールを備えています。ONLYOFFICE のサイトには Microsoft Office フォーマットに完全適合とあります。
スイートの中で、「デスクトップエディター」というクロスプラットフォーム (Windows, MacOS, Linux) に対応しているオフラインのアプリケーションが、無料で提供されています。
スタートメニューから「オフィス」を選択すると、まるで Microsoft Office と見紛うアイコンが表示されますが、Office Center の実体は、ONLYOFFICE のデスクトップエディターです。
Settings から表示言語の選択肢を見ると。残念ながら今のところ日本語がありません。
マイクロソフトの下記サイトから PowerPoint などの無料のテンプレートをダウンロードして試してみましたが、問題なく読み込めるようです。日本語の表示だけでなく入力もできます。
ONLYOFFICE については、あらためて LibreOffice や WPS Office と合わせて詳細な比較評価をしたいと考えています。
Helloa アシスタント
Linuxfx では、マイクロソフトによって開発された AI アシスタント、Cortana(コルタナ)にそっくりな Helloa が起動します。
"Hello, I'm ready to help you!" と音声が流れますが、現在はまだ形だけのようです。
下記記事には、「リード開発者の Rafael Rachid 氏によると、Helloa は開発の初期段階にあり、チームは "人工知能と音声コマンドを追加するために Google と統合している"」とあります。
要するに中身は「Google アシスタント」になるということでしょうか。ここまで Windows に似せようとする姿勢は、他の Linux ディストロには無いアプローチです。
WINE の利用
Windows addons をクリックすると WINE を設定する画面が表示されます。
Next ボタンをクリックすると、WINE (Winetricks) の設定が始まります。
再配布可能な Windows パッケージ(主に Microsoft .NET Framework 関連)のインストールが始まります。
それぞれのインストーラはマニュアルでクリックをしなければならないので面倒です。32bit/64bit のパッケージを数多くインストールしてようやく終了です。
スタートメニューから「アクセサリ」→ Winetricks を選択します。
WINEPREFIX が 64bit になっているという警告が表示されますが、かまわず OK ボタンをクリックします。
Winetricks のウィンドウが表示されます、まず、デフォルトの wineprefix を選択します。
試しにタスクマネージャ (taskmgr) を起動してみます。
Windows のタスクマネージャ風の WINE のアプリケーションが起動します。
まとめ
項目 | 説明 |
---|---|
ディストリビューション | Linuxfx 10 |
プロジェクトサイト | Windowsfx 10 LTS |
デスクトップ環境 | Cinnamon |
対応プラットフォーム | x86_64, 32bit ARMHF (RASPBERRY PI - 2 - 3 - 4, ASUS TINKERBOARD) |
パッケージ管理 | deb, APT |
日本語入力 | fcitx, mozc |
寸評 |
日本の家電量販店で販売されている PC のほとんどは Windows がプリインストールされています。そこまで Windows に似せたいのであればはじめから Windows を使えばいいのでは、と言いたくもならないわけではありませんが、そうではないのでしょう。ここまで思い切って Windows に似せようというアプローチはむしろ天晴れです。 今回評価できませんでしたが、RASPBERRY PI など ARM プロセッサ向けにも対応していますので、こちらで使うデスクトップ環境としては人気が出るかもしれません。 個人的には、はじめて触った ONLYOFFICE をもっと評価してみたくなりました。 |
参考サイト
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