bitWalk's: elementary OS は生き残れるか？

2023-10-10

elementary OS は生き残れるか？

Elementary, Inc. がリリースしている elementary OS は、Pantheon デスクトップ環境を普及させるためのフラグシップとなる Linux ディストリビューションで、Ubuntu の LTS 版をベースにして開発されています。Pantheon デスクトップ環境は macOS に似ていると言われていますが、自分は macOS を使っていないのでよくわかりません。

しかし、この綺麗でシンプルなデスクトップはとても魅力的です。Vala を使ってデスクトップアプリが開発されていると知り、Vala を使い始めたぐらいです（挫折ぎみですが…）。ただ、長年の慣れもあって、メイン PC の OS を Fedora Linux から elementary OS へ乗り換えるまでには至っていません。

elementary OS 7.1 のデスクトップ

メインで使っていなくとも、elementary OS は気になる Linux ディストリビューションの一つなのですが、英語版の Wikipedia による elementary OS の説明に気になる内容を見つけました^[2]。以下はその意訳です。少し補っています。

Change of ownership

2021 年後半に elementary OS 6.0 と 6.1 がリリースされましたが、COVID-19 の流行もあって、有料でのダウンロードモデルは十分な収益をもたらしませんでした。これにより Elementary, Inc. の二人の共同設立者、Cassidy James Blaede 氏と Danielle Foré 氏の間で法的な争いが起きました。

その結果、Cassidy James Blaede 氏は保有する株式全てを Danielle Foré 氏に売却して会社を去りました。また、この争いが起きている間に最高財務責任者 (CFO）の Liz Kecso 氏も会社を去ってしまいました。

Elementary, Inc. の経営者および従業員は、Danielle Foré 氏一人になってしまったのです。

Danielle Foré 氏はその後、YouTube で elementary OS の将来について発信しています。この時点では質疑で elementary OS 7.0 のリリースについてはなにも決まっていない (I don't know yet. I have no idea. @42:30) と語っていました。

Livestream with Danielle Foré – April 1st, 2022

elementary OS の開発者の方々が世界中にいるとはいえ^[6]、このような状況では開発が停滞してしまうのではないかと心配になりました。

幸い、今年の１月末に Ubuntu 22.04 LTS (jammy) をベースにした elementary OS 7.0 がリリースされ、さらに 7.1 がこの１０月にリリースされています。

しかし、霞を食って生きていくことはできません。会社の経営を維持するために収益源となる、より良いビジネスモデルを見つけてほしいものです。そして、パートタイムで elementary OS に貢献している開発者の方々には感謝しかありません。elementary OS が末永く続くプロジェクトであって欲しいものです。

ユーザとしては、継続して長く使える Linux ディストリビューションであることが、選択基準の大きな比率を占めると思うからです（そんなこと言うのなら、何か貢献しろよと突っ込まれそうですが…）。

おまけ

ちなみに、Red Hat 社のようなエンタープライズ向けの Linux ディストロを扱っている企業ならいざ知らず、Debian のようなプロジェクトは、どのようにスタッフを維持しているのでしょうか。まさか全員が無償のボランティアということはないでしょう。

調べてみると、従業員の数に大きな隔たりがあるものの、参考サイト [7] や [8] のような情報があります。さらに Debian プロジェクトでも [9] のような求人のメーリングリストがあります。中にはおおよその報酬が示されているものもありました。う～ん、なかなか奥が深いです。時間をかけて、オープンソースのプロジェクトを維持できているケースを探索します。

トップへ