2023-10-15

MX Linux の人気

MX Linux は、軽量 Linux ディストロの antiX とかつての MEPIS コミュニティとのベンチャープロジェクトで、各ディストロのベストなツールと才能を活用しています。エレガントで効率的なデスクトップと、シンプルな構成、高い安定性、安定したパフォーマンスで中規模のインストール容量になるように設計された中量級 OS です。Debian stable(安定板)をベースとしています。

MX Linux は、DistroWatch.com の Page Hit Ranking で長い間1位をキープし続けています。その魅力とはいったい何なのか、説得力ある理由を見つけられるかどうか判りませんが、インターネット上で出回っている評判を集めてみました。

MX-23 のデスクトップ画面 (Xfce)

PC-FREEDOM の考察

まずは、PC-FREEDOM を運営されている「コダシマ☆タカヒデ」さんの考察から。

コダシマさんは、「ちょうどよい Linux 感」と結論づけています。

MX Linux の設定用に開発された MX ツールに含まれるソフトウェア群は、いずれも「ちょうどよい Linux 感」にあふれるものだと、氏は述べています。

MX ツール

「ちょうどよい Linux 感」の例として、MX ツールにある MX パッケージインストーラーを挙げています。

MX Linux では、インストール時にロケールを日本語に設定しても、インストール直後は日本語入力のインプットメソッドが利用できないため、MX パッケージインストーラで必要なパッケージをインストールするというひと手間が必要になります。

MX パッケージインストーラ

このひと手間、すなわち Linux 臭さが残っているが故に、注目度が高いのだと、氏は言われています。

Reddit の掲示板より

次に、海外ではどんなことを言われているのでしょうか?

Reddit の掲示板で以下のような投稿を見つけたので斜め読みしてみました。

最初の回答(frc-vfco 氏)に次のような説明がありました。

Debian has been always near the top, mainly 2015-2016, and MX Linux is a somehow "easier Debian". Also, it aims to fit a "lower / older hardware" niche, for people in poor regions all around the world. So, we don't see so much talk about it, in our countries, but it is present in sites, blogs, forum's talk in other countries and languages.

【参考訳】

Debian は、主に 2015 年から 2016 年にかけて、常にトップに近い位置を占めていましたが、MX Linux は、いわば「より簡単な Debian」と言えます。また、世界中の貧しい地域の人々のために、「より安価な/古いハードウェア」のような特定分野にもフィットすることを目指しています。そのため、私たちの国ではあまり話題になりませんが、他の国や言語のサイト、ブログ、フォーラムでは話題になっています。

また、世界中の貧しい地域の人々のために、…の文脈がどこに掛かるのかよく判りませんでしたが、MX Linux が特別にそういったミッションを掲げているわけではなさそうです。ただ、他の回答の中にも、古い PC でもインストールできることを挙げている人が何人かいます。

"easier Debian"(より簡単な Debian)については、他の回答者からも同様な意見が出ていました。何が簡単かというと、OS のインストールです。まあ、これは同感です。

MX Linux は Debian stable のパッケージを利用していますので、デスクトップやツールなどカスタマイズされている部分を除けば、ほぼ Debian と同じと考えることができます。

MX Linux のパッケージリポジトリ
bitwalk@mx:~
$ ls /etc/apt/sources.list.d
debian-stable-updates.list  debian.list  mx.list
bitwalk@mx:~
$ cat /etc/apt/sources.list.d/debian.list
# Debian Stable.
deb http://deb.debian.org/debian bookworm main contrib non-free non-free-firmware
deb http://security.debian.org/debian-security bookworm-security main contrib non-free non-free-firmware
#deb-src http://deb.debian.org/debian bookworm main contrib non-free non-free-firmware

#debian backports
#deb http://deb.debian.org/debian bookworm-backports main contrib non-free non-free-firmware
bitwalk@mx:~
$ 

さて、そのインストールですが、Debian のインストールは結構大変です。難しい、というより冗長なのです。ま、そのぶん、細かい設定ができるので自由度が高いとも言えます。

下記に、Debian と MX Linux のインストール画面を列挙して比較してみました。使用したインストールパッケージは Debian は debian-12.2.0-amd64-netinst.iso、MX Linux は MX-23_x64.iso です。

Debian 12 のインストール

 

あらためて Debian のインストールのスクリーンショットを取って並べて見ましたが、確かに冗長であるものの、このぐらいは許容範囲なのかもしれないと感じました。

※ おおむかし、自分が Linux を最初にインストールしたのは Slackware だったので、それに比べれば、今の Debian のインストーラはずいぶんと親切だとは思います。😅

MX-23 のインストール

 

上記、MX Linux のインストールのスクリーンショットは、キーボードレイアウトの設定のところで3枚もとってしまってはいますが、全体的にシンプルなインストールの流れです。デフォルトの設定のままで良ければ、設定しなければならない箇所は、キーボードのレイアウト、ロケール(言語)と時刻、アカウントの設定ぐらいです。

ZDNet の記事

IT 関連ニュースなどのサイト ZDNet で、MX Linux の人気について扱った記事がありました。

筆者の Jack Wallen 氏は、MX Linux の魅力を次のように語っています。

One aspect of MX Linux that appeals to me is that the flagship version (Xfce) looks and feels like old-school Linux but with just enough modernity to make it a viable option for today's users.

【参考訳】

MX Linux の魅力のひとつは、フラッグシップ・バージョン(Xfce)が昔ながらの Linux のようなルック&フィールでありながら、いまどきのユーザーにとって十分な現代的センスを備えていることだ。

old-school とは肯定的なニュアンスでは「昔ながら」とか「懐かしい」あるいは「伝統的スタイルの」という意味になりますが、昔ながらの Linux とは、コダシマさんが言われる「ちょうどよい Linux 感」と通じる部分があるのかもしれません。

氏は、MX Linux のユーザーマニュアルと FAQ がデスクトップにアイコンで表示されていることも特徴として挙げています。ロケールを日本語にすると、日本語版のマニュアルと FAQ を利用できるようになっているのはちょっとビックリです。コミュニティの力はすごいですね。

MX Linux ユーザーマニュアル

氏は、MX Linux の欠点は Debian stable をベースにしていることだと述べています。そして、インストールされているソフトウェアは、時代遅れではないが、どう考えても最新・最高のリリースではないことは確かだと言っています。

Linux 好きで最新の動向が気になる人達にとっては、最新のパッケージに触れることをディストロに期待するのでしょうが、大多数のユーザーにとって安定して手軽に使えることの方がずっと大切なのかもしれません。意外とエキスパートが考える欠点は、多くの人にとって長所だったりもします。

まとめ

なんとなく Red Hat Enterprise LinuxUbuntu のような企業色を避ける個人が、企業色のない Debian を利用したいけれど、インストールがちょっと面倒だ。その結果、簡単にインストールでき、しかも安定して利用できる Debian 派生でコミュニティベースのディストロが MX Linux になるのかもしれない、そう考えました。しかし、他にも Debian 派生のディストロはたくさんあるだろうと、念のため Wikipedia で調べました。

Debian から派生した Linux ディストロ

Debian stable をベースにした、癖のなさそうな汎用ディストロというと、デスクトップ環境はカスタマイズされていると言っても、やはり MX Linux になってしまうのでしょうか。インストールも簡単ですし…。

Arch LinuxManjaro との関係に似ているのかもしれませんが、リポジトリは別ですし、Manjaro は結構新しいパッケージを利用できます。

Linux のユーザーの大多数は新しい機能やパッケージを追い求めているわけではない、ということは容易に想像がつくのですが、それでも残念ながら、その1位である説得力ある理由を見つけられたとは言えません。カスタマイズの容易さなどは、少し使い込まないと判りませんし、どのぐらいコミュニティが活発なのかもひきつづき調べていきたいと思います。

参考サイト

  1. MX Linux – Midweight Simple Stable Desktop OS
  2. Poor countries saving money by using Linux | InfoWorld [2013-07-29]

 

※ インストール前のライブ OS 上で、ロケールを日本語にしておけば、インストーラのメッセージが日本語になるということを知りました。

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