2021-04-28

Fedora 34 リリース

Fedora プロジェクトは 4月27日(米国時間⁠)、⁠Fedora 34 をリリースしました [1]。個人的には、最近メジャーバージョンアップされた新しい GNOME 40 がデスクトップ環境に採用されるということで、今回のリリースを昨年末から注目してきました。この機会にちょっと丁寧に今回のリリースを紹介したいと思います。

Fedora の正式エディションは下記の三種類です。

  • Fedora Workstation(デスクトップ向け)
  • Fedora Server(サーバ向け)
  • ⁠Fedora IoT(IoT 向け)

対応しているプロセッサは x86_64 と aarch64 で、Fedora IoT ではさらに armhfp (ARMv7) もサポートしています。

Fedora Workstation は、デフォルトのデスクトップ環境に GNOME を採用していますが、他のデスクトップ環境を利用したいユーザー向けに、インストールしてすぐに好みのデスクトップ環境を使い始められるように、下記のスピン (Spins) が用意されています。

つまり、ディスクトップ環境が違っても Fedora です。例えば Ubuntu のように Xubuntu とかデスクトップ環境に応じた名前があるわけではありません。

各デスクトップ環境は Fedora のレポジトリにあるので、デフォルト (GNOME) のデスクトップ環境でインストールしたあとで、別のデスクトップ環境をグループインストールして切り替えて使用することもできます。

さらに Labs という特定用途向けにカスタマイズされたインストーラ(下記)を利用することもできます。

  • Astronomy(天文学)
  • Comp Neuro(ニューロコンピューティング)
  • Design Suite(グラフィックデザイン)
  • Games(ゲーム)
  • JAM(オーディオ)
  • Python Classroom(Python 学習)を選択できます。

デスクトップ環境に GNOME 40 採用

3 月 24 日に正式リリースされたばかりの GNOME 40 が [2]、デフォルトのデスクトップ環境に採用されています。GNOME 3.x を使ってきたデスクトップユーザにとっては操作性が変わります。と言っても、基本的な操作は GNOME 3.x から大きくは変わっていません。

Fedora 34 Workstation デスクトップ画面

画面左上の「アクティビティ」をクリックするとアクティビティ画面に変わり、ダッシュ (Dash) が画面下に横向きに表示されるようになりました。

画面の切り替え(ショートカットキー)
⊞ Win または Alt + F1
デスクトップ画面とアクティビティ画面を切り替えます。
Fedora 34 Workstation アクティビティ画面

ダッシュの右端にある( 3 x 3 点 アイコン)をクリックすると、デスクトップアプリケーションの一覧が表示されます。

アプリ一覧表示(ショートカットキー)
⊞ Win + A
アプリケーション一覧の表示
Fedora 34 Workstation アプリケーション一覧の表示

Fedora 34 の新機能

Fedora 34 ChangeSet から引用して :[3]、ざっと日本語にしました。

1. システム全体に影響する変更

1.1 Binutils 2.35 binutils パッケージをバージョン 2.34 から 2.35 へ更新。
1.2 Enable btrfs transparent
zstd compression by default
btrfs をデフォルトのファイルシステムに使用する場合、zstd による透過的な圧縮が有効になりました。圧縮でスペースを節約し、書き込み量を抑えることでフラッシュベースのメディアの寿命を大幅に延ばすことができます。また、読み取りと書き込みのパフォーマンスも向上します。
1.3 Route all Audio to PipeWire PulseAudio と JACK からのすべてのオーディオを、デフォルトで PipeWire Audio デーモンにルーティングします。
1.4 Enable systemd-oomd
by default for all variants
デフォルトで systemd-oomd を有効にすることで、out-of-memory (OOM) になった時の状況を改善します。
1.5 Boost 1.75 upgrade Boost 1.75 に更新。
1.6 Changes/MinGW environment
and toolchain update
MinGW ツールチェーンを最新のアップストリーム安定版リリースに更新。
1.7 GNU Toolchain update
(gcc 11, glibc 2.33)
GNU Toolchain を gcc 11, binutils 2.35, glibc 2.33 に切り替えます。
1.8 Golang 1.16 Go コンパイラを 1.16 に更新し、すべての golang パッケージをリビルドしました。
1.9 IBus 1.5.24 IBus は GTK4 IM モジュールを提供し、入力メソッド名をより簡単に検索できるように ibus-setup を強化。
1.10 ibus-anthy
for default Japanese IME
デフォルトの日本語 IME(入力メソッドエンジン)を ibus-kkc から ibus-anthy へ変更。
1.11 Use ibus-m17n as the default IME
for Sinhala
デフォルトのシンハラ語 IME を ibus-sayura から ibus-m17n の入力メソッド "m17n:si:sayura - sayura (m17n)" へ変更。
1.12 Use ibus-unikey as the default IME
for Vietnamese
デフォルトのベトナム語 IME を ibus-bogo から ibus-unikey へ変更。
1.13 Ignore Anaconda kernel boot parameters
without 'inst.' prefix
Anaconda は 'inst' prefix (inst.stage2=) を持つブートオプションと、持たないブートオプション (stage2=) 両方の使用できますが、inst.プレフィックスを含まない Anaconda カーネルブートパラメータを無視するようになります。
1.14 LLVM 12 llvm サブプロジェクトをバージョン 12 に更新。
1.15 NSS CK_GCM_PARAMS change PKCS #11 v3.0 で PKCS #11 の仕様が変更されたため、NSS は CK_GCM_PARAMS 構造体の定義をソース互換性のない方法で変更する必要があります。NSS 3.52 でこの変更を行いました。この変更は ABI には影響しません。古いバージョンの NSS でコンパイルされた古いプログラムはまだ動作します。NSS を使用して AES GCM を直接呼び出すパッケージのみが影響を受けます。
1.16 OpenLDAP without
Non-threaded Libraries
OpenLDAP はスレッド化されていないバージョンの libldap を使用しません。代わりに、ランタイムライブラリが動作し続けるためのシンボリックリンクが提供され、libldap で構築されたソフトウェアはすべて実質的に libldap_r で構築されます。
1.17 Remove make from BuildRoot この変更により、Kojimock のデフォルトのビルドルートから make が削除されます。
1.18 Remove support for
SELinux runtime disable
SELinux ランタイムのサポートを無効にして、初期化後の読み込みのみの保護で LSM フックを強化できるようにしました。
1.19 Restart services
at end of rpm transaction
各 rpm パッケージで再起動すべき各サービスを再起動するためのスクリプトレットは、ユニットファイル内の宣言と、最後に発生する rpm トランザクショントリガーに置き換えられ、すべてのサービスが再起動されます。
1.20 Ruby 3.0 最新安定版 Ruby 3.0 に更新。
1.21 Rust Crate Packages
For Release Branches
Rust の Crate パッケージは、現在 Fedora Rawhide(Fedora の開発ツリーで、ローリングリリースモデルを採用)でしか利用できないので、Fedora リリースブランチ用に Rust アプリケーションをパッケージ化するのが難しく、通常よりも多くのステップを必要とします。この変更は、Rust のパッケージングを Fedora の通常のパッケージングワークフローと一致させます。
1.22 Unify the GRUB configuration
files location across all
supported architectures
この変更により、GRUB 設定ファイルのレイアウトがサポートされているすべてのアーキテクチャで一貫したものになりました。現在 EFI は特殊なケースで、GRUB 設定ファイルと環境変数ブロックはブートパーティション (ブートパーティションが使用されていない場合は /boot ディレクトリ) の代わりに EFI システムパーティション (ESP) に格納されています。
1.23 Wayland by Default
for KDE Plasma Desktop
SDDM のデフォルトのセッションで、X11 ベースより Wayland ベースの KDE Plasma Desktop セッションを優先するように変更しました。
1.24 Xwayland as a standalone package Xwayland を安定版ブランチではなく、現在のコードから構築されたスタンドアロンパッケージに移動。

2. 自己完結型の変更

2.1 AArch64 KDE Plasma Desktop imageFedora 34 の配布セットに AArch64 KDE Plasma Desktop のスピンイメージを追加。
2.2 uEFI for ARMv7ARMv7 で armhfp で生成されたすべてのイメージに UEFI をデフォルトで使用。
2.3 BIND 9.16 BIND 9 は次期安定版 BIND 9.16 に更新。
2.4 Move deprecated bluetooth
utilities to subpackage
非推奨の bluez bluetooth ユーティリティをサブパッケージに移動。
2.5 Comp Neuro Container Image CompNeuro Lab イメージと同じニューロ・コンピューティング用ソフトウェアを含む Comp Neuro コンテナイメージを提供。
2.6 Compress Kernel Firmware カーネルファームウエアを圧縮して使用するディスクサイズを節約します。
2.7 Deprecate xemacs,
xemacs-packages-base,
xemacs-packages-extra, and neXtaw
xemacs, xemacs-packages-base, xemacs-packages-extra, neXtaw パッケージは非推奨になります。
2.8 Deprecate nscd 名前付きサービスのための nscd キャッシュを廃止。
2.9 Deprecate python-mock python-mock (python3-mock) パッケージは Fedora 34 で非推奨になります。
2.10 Disable Python 2 Dist RPM Generators
and Freeze Python 2 Macros
python2.7dist() と python2dist() の自動生成された Python-rpm-generators の provides/require は自動生成されなくなり、Fedora で動作するパッケージでは使用されなくなります。python(abi) = 2.7 の自動提供/要求は維持されます。
2.11 Enable HarfBuzz in FreeType FreeType で HarfBuzz を使用して、より複雑なテキスト整形を必要とする言語のグリフのヒントを改善します。
2.12 fbrnch Fedora に fbrnch パッケージャーツールを追加します。
2.13 i3 Spin 人気の i3 ウィンドウマネージャを搭載した公式の Fedora Spin をリリースします。
2.14 GitRepos-master-to-main Fedora の git リポジトリが "master" ではなく "main" をデフォルトの git ブランチとして使用するようになります。
2.15 GNOME 40 最新の GNOME リリースである GNOME 40 を採用しました。
2.16 kasumi-unicode kasumi-unicode は、kasumi プロジェクト内の kasumi.spec で新たに生成されます。
2.17Localization measurement
and tooling
エンドユーザーや貢献者のために、Fedora Workstation の翻訳の進捗状況や翻訳者のための便利なファイル(例: 翻訳記録)を含む公開のウェブサイトを提供します。
2.18 LXQt 0.16.0 LXQt を 0.16.0 にアップデート。
2.19 Make selinux-policy up-to-date
with the latest kernel
新しいパーミッション、クラス、および機能を selinux ポリシーに追加し、システムがそれらを認識し、エラーメッセージなしで起動できるようにし、制限されたサービスのための実際のポリシーでそれらを使用できるようにします。
2.20 MariaDB 10.5 MariaDB('mariadb' パッケージ)を 10.4 から 10.5 へ更新。
2.21 Policy for Modules
in Fedora and Fedora ELN
ユーザーとパッケージャーの最適な体験を保証するために、Fedora の Modular コンテンツのためのルールを確立します。現在のところ、これらのルールは Fedora ELN にのみ適用されますが、将来、別の変更提案を通して Fedora と EPEL で再利用できるように作成します。
2.22 Stop Shipping
Individual Nodejs Library Packages
Nodejs パッケージは下記のみになります。
  • インタプリタ、開発用ヘッダ/ライブラリ、プロジェクトレベルのインストールを管理するツール(NPM, yarn など)。
  • ユーザーがシェルで使いたいと思うようなバイナリを提供するパッケージ。
  • コンパイル済み/バイナリの nodejs モジュール
2.23 ntp replacement ntp パッケージが ntpsec に置き換えられます。
2.24 Reduce installation media size
by eliminating the intermediate
EXT4 filesystem in the SquashFS
インストールイメージの構築プロセスを変更し、ネットインストールや DVD ISO イメージに存在する Squash ファイルシステムイメージに EXT4 ファイルシステムイメージを含まないようにします。
2.25 PostgreSQL 13 PostgreSQL (postgresql と libpq コンポーネント) をバージョン 12 からバージョン 13 に更新。
2.26 Python Upstream Architecture Names Fedora の Python エコシステムでは、以前にパッチが適用された Fedora の名前ではなく、(主にファイル名で)CPython のアップストリームアーキテクチャの名前を使用してください。例えば、/usr/lib64/python3.9/lib-dynload/array.cpython-39-powerpc64le-linux-gnu.so の代わりに /usr/lib64/python3.9/lib-dynload/array.cpython-39-ppc64le-linux-gnu.so とします。これにより、Python 自体のパッケージ化は少し厄介になりますが、Fedora の Python をアップストリームに近づけ、ppc64le manylinux wheels との相互運用性の問題を解決しました。この変更は ppc64le と armv7hl にのみ影響します(koji.feedoraproject.org で構築されたアーキテクチャを考慮しています)。ファイル名に常に %{_arch}-linux%{_gnu} が含まれていると仮定しているパッケージに適応させる必要があります。
2.27 Ruby on Rails 6.1 Ruby on Rails 6.1 は Ruby で書かれた有名な Web フレームワークの最新版です。
2.28 Scale ZRAM to Full Memory Size Fedora 33 ではデフォルトで zram を有効にしました。仮想スワップデバイスのサイズは、圧縮スワップページに使用されるメモリ量が典型的なシナリオでは物理メモリの 4 分の 1 に制限されるように設定されていました。このサイズは現在、物理メモリの半分に増加しています(zram-fraction は 1.0 になり、max-zram-size は 8 GiB になります)。これにより、小容量のシステムでも Anaconda インストーラや他のプログラムを正常に起動できるようになりました。
2.29 Stratis 2.3.0 このリリースでは、プールロック解除コマンドが拡張され、pool bind と pool unbind という2つの新しいコマンドが追加されました。
2.30 Xfce-4.16 Xfce 4.16 安定版リリースへアップデート。
2.31 X.org Utility Deaggregation コレクションパッケージ xorg-x11-{apps,font-utils,res-utils,server-utils,utils,xkb-utils} は破棄され、その中のユーティリティは個別にパッケージ化されます。

参考サイト

  1. Fedora Linux 34 is officially here! - Fedora Magazine [2021-04-27]
  2. GNOME 40 Release – The GNOME Foundation [2021-03-24]
  3. Releases/34/ChangeSet - Fedora Project Wiki

 

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