openSUSE (/ˌoʊpənˈsuːzə/) は、ドイツを拠点とする SUSE Software Solutions Germany GmbH と他の企業などが支援する openSUSE プロジェクトが開発している Linux ディストリビューションです。openSUSE には二種類の版があります。商用版の SUSE Linux Enterprise (SLE) とコードベースを共有する LTS(長期サポート)スタイルの Leap と、より最新のパッケージを利用できるローリングリリーススタイルの Tumbleweed です。
3 月 3 日に openSUSE Leap 15.3 Bata リリースのアナウンスがありましたので [1]、仮想マシンにインストールして試用してみました。
今回のリリースにおける最大の変更点は、Leap の構築方法と SUSE Linux Enterprise (SLE) との関係です。今回から Leap は SLE のバイナリパッケージの上でビルドされるようになったので、今後コミュニティリリースでの開発を、必要があればエンタープライズリリースでの開発に簡単に移行することができるようになります。詳しくは参考サイト [2] をご覧ください。
インストール
下記サイトから、openSUSE Leap 15.3 Bata の iso イメージをダウンロードできます。
仮想マシン (GNOME Boxes) へ openSUSE-Leap-15.3-DVD-x86_64-Build91.1-Media.iso をインストールした結果を順番に紹介します。
起動画面のメニューで最初の項目が "Boot from Hard Disk"(ハードディスクから起動)になっています。"Installation" を選択してインストーラーを起動します。
"Boot from Hard Disk"(ハードディスクから起動)がデフォルトになっているのは、おそらく、インストール終了後に自動で再起動して、インストールした openSUSE を起動させるためでしょう。他の Linux ディストロ、例えば Ubuntu では、インストール後にインストールメディアを取り外さないと再起動へ進まないようになっています。
言語/キーボード/ライセンス同意
「言語/キーボード/ライセンス同意」で言語を日本語に設定すれば、あとのメニューは日本語になります。インストールも日本語環境に設定されます。
システムの役割
「システムの役割」でデスクトップ環境を設定します。ここでは一番上にある KDE Plasma を選択しました。
パーティション、タイムゾーン、アカウントの設定
パーティションはインストーラの提案どおり、タイムゾーンは日本、そしてアカウントの設定を設定します。
インストールの実行
設定を確認した後、インストールが開始されます。
再起動後、ログイン画面へ
インストールが終わると再起動してログイン画面になります。設定したパスワードを入力してログインすると、「ようこそ」の画面が表紙在れます。
「ようこそ」画面を閉じると、KDE Plasma のデスクトップ画面が表示されます。
システム管理
YaST
YaST(Yet another Setup Tool, もう 1 つのセットアップツール) は、openSUSE のインストール/設定ツールです。システム全体の設定を行なうことを目指して開発が続けられていて、インストール時からインストール後のカスタマイズまで、openSUSE に深く関わっています。
下記は YaST コントロールセンターのスクリーンショットです。
YaST ソフトウエアリポジトリ
YaST を使い込んでいないので、その魅力を伝えることができないのですが、「ソフトウェアリポジトリ」について便利な機能を見つけました。
YaST ソフトウェアリポジトリのウィンドウを開いてみると、リポジトリの一覧にインストール時に使用したインストールメディアが残っています。
追加 (A) ボタンをクリックすると左のようなウィンドウが表示されて、リポジトリを追加する方法が選択できるようになっています。
個人で使用している Linux は、常時インターネットに接続することが当たり前になっているので、一旦システムをインストールしてしまえば、パッケージの追加、更新から、システムの更新まで全てインターネット経由でできます。
しかし、エンタープライズ用途の場合、社内のネットワークに接続されていても、外部インターネットにはアクセスできない場合があります。システムの更新作業を少しでも簡単にするためには、管理用のソフトウェアがリポジトリの追加方法について柔軟に対応していることはとてもありがたいことです。
他の Linux ディストロの Ubuntu や RHEL / Fedora だってリポジトリを追加することはもちろん可能ですが、システム管理用のツールでこんなに簡単にできなかったように思います。しかし、単に自分が知らないだけかもしれませんので、詳しく調べて別の機会にまとめたいと思います。
Zypper
Zypper はローカルメディアや(ネットワーク接続された)リモートメディアにより提供されるソフトウェアパッケージのインストール、削除、更新および検索を行うための、ZYpp のネイティブコマンドラインインタフェースです。Zypper と等価なグラフィカルツールはYaST のパッケージ管理モジュールになります。
他のパッケージ管理コマンドの apt-get や yum などとのコマンド比較が openSUSE の wiki にありましたので下記にリンクを示しました。YaST ソフトウェア管理へのリンクも併せて示してあります。
zypper コマンドの使用例
zypper コマンドの使用例として、パッケージの更新コマンドを実行した例を示しました。
bitwalk@localhost:~> sudo zypper update [sudo] root のパスワード: リポジトリのデータを読み込んでいます... インストール済みのパッケージを読み込んでいます... 以下 1 個の新しいパッケージをインストールします: yast2-trans 以下 1 個のパッケージを削除します: yast2-trans-en 1 個の新規パッケージのインストール, 1 個の削除. 全ダウンロードサイズ:296.1 KiB。すでにキャッシュ済み:0 B。 この操作を行うと、20.9 KiB の容量が解放されます。 続行しますか? [y/n/v/...? すべてのオプションを表示] (y): y パッケージ yast2-trans-84.87.20210219.c6a06209b7-1.1.noarch を取得しています (1/1), 296.1 KiB (展開後サイズ 0 B) 取得しています: yast2-trans-84.87.20210219.c6a06209b7-1.1.noarch.rpm .............[完了] ファイルの競合を確認中: ..........................................................[完了] (1/1) インストールしています:yast2-trans-84.87.20210219.c6a06209b7-1.1.noarch ....[完了] bitwalk@localhost:~>
雑感
openSUSE Leap 15.3 と SLE 15 SP3 がコードベースを共有するようになるということは、Red Hat 社の Red Hat Enterprise Linux 8 (RHEL 8) と CentOS 8 との関係と対照的です。Red Hat 社は、商用の RHEL 8 をリビルドした無料の CentOS 8 の開発を、現行の CentOS 8.3 までとし、2021 年 12 月末でサポートを中止すると発表したのです [6]。CentOS は、RHEL のオープンソース部分をリビルドしたダウンストリームのディストロです。一方、openSUSE Leap は、コードベースで SLE と同じになるというのですから、事実上、オープンソースの部分はバイナリでもコミュニティ版 (openSUSE) と商用版 (SLE) との差異が無くなります。
この SUSE 社と Red Hat 社の対応の違いは、今後の両社の Linux の発展にどのような影響をもたらすのでしょうか。しばらく注視していく必要がありそうです。
参考サイト
- openSUSE Leap 15.3 Reaches Beta Build Phase - openSUSE News
- Geeko Blog » openSUSE Leap 15.3 と Closing The Leap Gap について [2020-12-22]
- SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsの紹介 | SUSE Communities [2020-03-16]
- 「SAP HANA向けLinuxのシェア90%」から新たな未来を開くSUSEの戦略 - ZDNet Japan [2018-05-31]
- How SUSE embraces SAP’s “customer choice” strategy to win big | SAP Blogs [2020-02-26]
- CentOS Project shifts focus to CentOS Stream – Blog.CentOS.org [2020-12-08]
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