Fedora Linux は Red Hat 社が支援するコミュニティ Fedora Project で開発されているディストリビューションで、最新の技術を積極的に取り込むことで知られています。また Fedora Linux の開発成果が、後にリリースされる Red Hat Enterprise Linux, RHEL に取り込まれています。Fedora Linux は、おおむね春と秋の年二回の頻度で新しい版がリリースされています。
Fedora Linux では、Workstation 版で GNOME がデスクトップ環境として採用されていますが、他のデスクトップ環境も Spins [1] として iso イメージが公開されており、インストールしてすぐ利用できるようになっています。
一方、Workstation 版をインストールした後でもデスクトップ環境を GNOME から切り替えることができます。本記事では Fedora Linux で利用できるデスクトップ環境を紹介します。
OUTLINE
デスクトップ環境を選択できる自由
Fedora Linux では rpm パッケージをインストールするなどの管理に dnf コマンドを利用でしていますが、dnf では単体パッケージの他にグループ単位でパッケージのインストールおよび削除を扱うことができます。
本記事では下記のバージョンの Fedora Linux を使って説明を進めます。
Fedora Linux 35 | x86_64 |
利用可能なグループの一覧を出力するには、dnf group list とタイプします。
[bitwalk@fedora ~]$ sudo dnf group list : : 利用可能な環境グループ: Fedora Custom Operating System 最小限のインストール Fedora Server Edition Fedora Cloud Server KDE Plasma デスクトップワークスペース Xfce デスクトップ LXDE デスクトップ LXQt Desktop Cinnamon デスクトップ MATE デスクトップ Sugar デスクトップ環境 Deepin Desktop 開発環境とクリエイティブワークステーション Web サーバー インフラサーバー 基本的なデスクトップ環境 i3 desktop インストール済みの環境グループ: Fedora Workstation インストール済みのグループ: Container Management LibreOffice 利用可能なグループ: : : [bitwalk@fedora ~]$
グループ単位でインストールするには、下記のようにタイプします。
$ sudo dnf group install グループ名
デスクトップ環境を追加しても、ログイン時に表示される画面 (GDM) は変わりません。追加のデスクトップ環境をインストール、再起動した後のログイン時に画面右下に表示される アイコンをクリックして、ログイン後のデスクトップ環境を切り替えます。
なお、グループ単位でパッケージをアンインストールするには下記のようにタイプします。
$ sudo dnf group remove グループ名
上記グループのリストで、デスクトップ環境に関係するグループに黄色の下線を付けました。それぞれ簡単に紹介します。[基本、アルファベット順]
GNOME
GNOME (/ɡəˈnoʊm/)は、Wayland あるいは X Window System 上で動作するデスクトップ環境、またはその開発プロジェクトです。KDE と並んで、広く使われています。ツールキットには GTK を採用しています。GNU プロジェクトの一部であり、ライセンスについては、GNOME ライブラリは LGPL、アプリケーションは GPL になっています。
Fedora Linux の標準のデスクトップ環境です。Red Hat Linux の時代から現在の Fedora Linux および Red Hat Enterprise Linux まで、GNOME は一貫して標準のデスクトップ環境になっています。
Cinnamon
Cinnamon は、GNOME 3 をベースとしたデスクトップ環境で、2011 年に初版がリリースされました。Cinnamon のプロジェクトは元々 GNOME Shell をフォークすることで、単なるグラフィカルシェルとして開始されましたが、Cinnamon 2.0 で固有のデスクトップ環境となりました。Cinnamon は元々 Linux Mint のために開発されましたが、時が経つにつれ他の Linux ディストリビューションへも広く普及するようになりました。
GNOME 3 の GNOME Shell を受けれず、Linux Mint の従来のデスクトップスタイルを維持するために GNOME Shell をフォークして開発されているデスクトップ環境です。
$ sudo dnf group install "Cinnamon デスクトップ"
Deepin
Deepin デスクトップ環境 (DDE) は、Linux ディストロ Deepin に搭載されている、Qt を利用した独自のデスクトップ環境です。Deepin は中国に拠点をおく Wuhan Deepin Technology Co., Ltd.(武汉深之度科技有限公司)が開発しています。
Deepin デスクトップ環境のバージョン番号はどれになるのかがよく判らなかったので、deepn-desktop パッケージのバージョン番号を付記しました。ちなみに Deepin Community Edition 20.3 では、deepin-desktop-base のバージョンが 2021.11.08-apricot となっています。
$ sudo dnf group install "Deepin Desktop"
なお、Deepin デスクトップ環境をしばらく試用していると、画面下のパネルが表示されなくなってしまいました。Deepin デスクトップ環境を気に入り、デスクトップ環境重視で Linux を使いたい場合は Deepin OS の導入をオススメします。
i3
i3 は X 上で動作する動的タイル型ウィンドウマネージャの一つです。 wmii の修正かつ後継を念頭に置き、“Do What I Mean. Good Docs. Clean Code. Sounds good?(直感的な操作。優良な手引き。簡潔なソースコード。魅力的だろ?)” という理念を掲げています。
タイル型のウィンドウマネージャは全く使い慣れておらず、スクリーンショットのアプリを操ることができないので、GNOME Boxes 上に Fedora Linux Workstation 35 をインストールしてから、i3 デスクトップ環境をインストールして、 GNOME Boxes の機能でスクリーンショットを取っています。
$ sudo dnf group install "i3 desktop"
KDE Plasma
KDE Plasma 5 は、第5世代の KDE デスクトップ環境です。KDE Plasma 5 は KDE Plasma 4 の後継で、2014 年 7 月 15 日に最初のバージョンがリリースされました。Breeze と呼ばれる新たなデフォルトテーマが採用され、デバイス間での連携の向上などが行われました。グラフィカルインタフェースはハードウェアアクセラレーションに OpenGL を利用する QML に完全に移行し、性能の改善と消費電力の削減が達成されました。
KDE Plasma は(Fedora Linux の開発成果を製品にした)Red Hat Enterprise Linux 7.5 までは GNOME と並んでデスクトップ環境の選択肢でしたが、7.6 では非推奨になりました。しかしながら 8 (8.5) になった現在でも、KDE Plasma のみはグループ環境として利用できるようになっています。
$ sudo dnf group install "KDE Plasma デスクトップワークスペース"
LXDE
LXDE (Lightweight X11 Desktop Environment) は UNIX および Linux や BSD のような POSIX プラットフォーム上で動作する、GPL 下で配布されるオープンソースのデスクトップ環境です。ミニノート・サブノートのように比較的処理能力の低いパソコンでもスムーズに動くように設計され、「省エネ」且つ「高速に動く」デスクトップ環境のソリューションであるとされています。
2011 年 5 月 24 日にリリースされた Fedora 15 で GNOME 3 が導入されました。当時、デスクトップ環境の変化についていけなかったので、しばらく LXDE に切り替えて利用していた時期があります。問題なく使えていたのですが、いつまで経っても 1.0 がリリースされないことや、LXQt の分離などがあって、徐々に新しい GNOME を使うことが多くなり、今ではもっぱら GNOME ばかりになってしまいました。
$ sudo dnf group install "LXDE デスクトップ"
LXQt
LXQt は完全なデスクトップ環境の提供を目的とした、開発中のソフトウェアパッケージのバンドルです。LXQt は LXDE と Razor-qt の両プロジェクトを統合して作られました。
Qt ツールキットベースの軽快なデスクトップ環境に興味を持ち、Fedora で利用できるので使おうとした時期はあります。当時は日本語入力の設定がうまくできなくて利用を断念した記憶があります。現在の Fedora Linux 35 で確認したところ、GNOME で使っていた Ibus の変換エンジンは ⊞ Win + SPACE で切り替えて利用できました。
$ sudo dnf group install "LXQt Desktop"
MATE
MATE (/ˈmate/) は GNOME 2 のコードからフォークされたデスクトップ環境です。MATE という名称は、マテ茶とその原料となることで知られる南米の亜熱帯地域原産の植物イェルバ・マテに由来します。名称変更は GNOME 3 のコンポーネントとの競合を防ぐために行われました。
MATE (/ˈmɑːteɪ/) と名前を変えましたが、GNOME 2 のデスクトップスタイルを踏襲する事実上の後継です。ただし、現在のバージョンでは GNOME 3.x のコンポーネントを多く利用しています。
$ sudo dnf group install "MATE デスクトップ"
Sugar
Sugar は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンに本拠を持つ Sugar Labs が開発する、デスクトップ環境です。主に OLPC XO-1 などの、教育用パーソナルコンピューター向けに開発されています。
以前の Fedora Linux では使えた記憶があるのですが、下記のようにインストールしても GDM が正常に起動しませんでした。念の為、Spins の iso イメージを仮想マシンにインストールしようとしましたが、こちらは正常にログインできませんでした [3]。
$ sudo dnf group install "Sugar デスクトップ環境"
Xfce
Xfce は、X Window System 上で動作するデスクトップ環境の一つです。豪華な見た目と簡単な使用感を保ちながら、軽量・高速なデスクトップ環境を目指しています。ライセンスは各コンポーネントにより、GPL、LGPL または BSD ライセンスになっています。
現在の Xfce 4.16 の GUI コンポーネントはは GTK3 を利用しています。GNOME や KDE と並んで、いやそれ以上に多くの Linux ディストリビューションに採用されているデスクトップ環境です。
$ sudo dnf group install "Xfce デスクトップ"
まとめ
Fedora Linux で利用できるデスクトップ環境は、標準の GNOME をはじめとして、Fedora のロゴや壁紙の追加以外はあまり手を加えられていないように見受けられます。
コテコテにカスタマイズされたデスクトップ環境も素晴らしいですが、同じデスクトップ環境を長く使い続けるにあたって利用しているデスクトップ環境を知るには、Fedora Linux で標準のデスクトップ環境を変えて使ってみるのも一興ではないでしょうか。
参考サイト
- Fedora Spins
- Red Hat Enterprise Linux 7.6公開 - KDE、RHEL 7.6から非推奨に | TECH+ [2018-11-07]
- 1895184 – Sugar SOAS Fedora 33 GA spin is broken... autologin not working, no liveuser no root login on text console [2020-11-05]
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