2020-06-13

Linux ディストロ探訪(15) 〜 elementary OS 〜

Linux とは本来 Linux カーネルのことを指しています。しかし、カーネルだけでは OS として動作させることはできません。そこで、OS に関連するツールやアプリケーションなどをまとめて、インストールし易く、インストール後にすぐ利用できるような配布形態にしたものを「ディストリビューション(略してディストロ)」と呼んでいます。

本シリーズ記事は、Linux ディストリビューションをピックアップ、仮想マシン(あるいは実機)にインストールして紹介します[不定期]。

elementary OS とは

elementary OS は、Daniel Foré 氏が 2007 年に設立した elementary LLC 社が開発、配布している、Ubuntu LTS をベースとした Linux ディストリビューションです。同社が Vala で開発したデスクトップ環境 Pantheon や、アプリおよびコンポーネントを利用できます。

elementary OS 5.1 Hara のデスクトップ画面

仮想環境へのインストール

elementary OS のインストーラには、Ubuntu と同じく Ubiquity が使われています。そのため、Ubuntu のインストールと同じだと言っても良いのかしれませんが、簡単にスクリーンショットを掲載します。

GNOME Boxes に、タダでダウンロードした elementaryos-5.1-stable.20200603.iso を読み込んでインストールしました。

最初にライブシステムが起動し、elementary OS を試すかインストールするかの選択画面が出ますので、最初に左側の言語を選んでから elementary をインストール をクリックしてインストールへ進みます。

「キーボードレイアウト」→「アップデートと他のソフトウェア」→「インストールの種類」→「どこに住んでいますか?」→「あなたの情報を入力してください」と進めます。

もしかして、それぞれの画面の翻訳が Ubuntu 18.04 と違うかもしれないと思って調べましたが、全く同じでした。

ファイルのコピーとインストールが始まります。

しばらく待つとインストールが終わりますので再起動します。

しばらく待ってログインの画面が表示されたら、設定したユーザーアカウントでログインします。

elementary OS 5.1 Hara のログイン画面
elementary OS 5.1 Hara のインストール後、最初にログインした後の画面

最初に以下のような設定をします。

アプリケーション

elementary OS をインストール直後に利用できる GUI アプリは多くありません。画面左上の「アプリケーション」をクリックして表示される以下の 15 のアプリだけです。

  • AppCenter (elementary, Inc.)
    • AppCenter はコンピュータにソフトウェアをインストールおよび削除、閲覧するための管理ソフト。(Wikipedia より引用)
  • Epiphany (The GNOME Project)
  • カメラ (elementary LLC)
    • カメラで写真と動画を撮影します
  • カレンダー (elementary LLC)
    • 予定の表示と計画をします
  • コード (elementary LLC)
    • 便利なエディター
  • システム設定 (elementary, Inc.)
    • システムとユーザーの設定を変更します
  • スクリーンショット (elementary LLC)
    • 画面の画像を保存します
  • ターミナル (elementary LLC)
    • コマンドラインを使用します
  • ビデオ (elementary, Inc.)
    • 動画や映画を見ます
  • ファイル (elementary LLC)
    • ファイルとフォルダーを閲覧したり管理したりします
  • フォト (elementary LLC)
    • 写真を整理します
  • マルチタスキングビュー (elementary, Inc.)
    • Pantheon 向けのコンポジット型ウィンドウマネージャー
  • ミュージック (elementary LLC)
    • elementary の公式ミュージックプレーヤー
  • メール (elementary LLC)
    • メールを送信し受信します
  • 電卓 (elementary, Inc.)
    • 簡単な式を計算します

AppCenter は Ubuntu ソフトウェアセンター (AppCenter) をベースにしているかもしれませんが、elementary OS の GitHub のサイトで開発されています。したがって、GNOME の Web ブラウザ以外は、elementary OS で開発されているアプリです。

アプリを追加する必要があれば AppCenter を使います。例えば AppCenter で GIMP をインストールしようとすると、下記のようなメッセージが出ます。

キュレーション (curation) とは、人力で情報を収集、整理、要約、公開(共有)することです(英辞郎 on the WEB:アルクより引用)。elementary がキュレーションしていないということは、elementary のパッケージとして配布されているものでは無いということです。インストールはできるけど、elementary OS の保証外ということでしょう。「□ キュレーションに関する警告を表示」のチェックを外せば次回からメッセージが表示されなくなります。

終わったところから再開できるアプリ

上記アプリのうち、Epiphany(ブラウザ)とコード(エディタ)を使って気付いたことは、前回終了したときの状態でアプリを再開できることです。ブラウザでは慣れてしまえば、結構便利な機能かもしれません。

Flatpak のパッケージ

elementary OS 5.1 Hera から、Flatpak をサポートするようになったということですが、AppCenter から Flatpak のパッケージを識別してインストールする方法が判りませんでした。ウェブブラウザで flathub.org へアクセスしてアプリをインストールしようとしても、AppCenter が起動してインストールするわけでなく、単純に flatpakref ファイルがダウンロードされるだけでした。

やむなく端末エミュレータ上で flatpak コマンドで GIMP をインストールしてみたところ、正常に動作しました。ただ、インストールしたアプリが、デスクトップのアプリケーション一覧に登録されなかったので flatpak run コマンドで起動しました。

※ なお、OS の再起動後、アプリケーション一覧にインストールした GIMP のアイコンが表示されました。😅

bitwalk@elementary-pc:~$ flatpak install https://flathub.org/repo/appstream/org.gimp.GIMP.flatpakref
The remote 'flathub', referred to by 'org.gimp.GIMP' at location https://dl.flathub.org/repo/ contains additional applications.
Should the remote be kept for future installations? [Y/n]: y
Required runtime for org.gimp.GIMP/x86_64/stable (runtime/org.gnome.Platform/x86_64/3.36) found in remote flathub
Do you want to install it? [Y/n]: y

org.gimp.GIMP permissions:
    ipc     network     x11     file access [1]     dbus access [2]     tags [3]

    [1] /tmp, host, xdg-config/GIMP, xdg-config/gtk-3.0, xdg-run/gvfs
    [2] org.freedesktop.FileManager1, org.gtk.vfs, org.gtk.vfs.*
    [3] stable


        ID                                             Branch            Op           Remote            Download
 1. [✓] org.freedesktop.Platform.GL.default            19.08             i            flathub            84.6 MB / 85.1 MB
 2. [✓] org.freedesktop.Platform.openh264              2.0               i            flathub           857.5 kB / 916.8 kB
 3. [✓] org.gnome.Platform.Locale                      3.36              i            flathub             1.7 MB / 323.0 MB
 4. [✓] org.gtk.Gtk3theme.elementary                   3.22              i            flathub            75.3 kB / 1.3 MB
 5. [✓] org.gnome.Platform                             3.36              i            flathub           273.8 MB / 324.5 MB
 6. [✓] org.gimp.GIMP                                  stable            i            flathub            84.6 MB / 110.5 MB

Installation complete.
bitwalk@elementary-pc:~$ flatpak list
Name                                               Application ID                                 Version           Branch           Installation
default                                            org.freedesktop.Platform.GL.default                              19.08            system
openh264                                           org.freedesktop.Platform.openh264                                2.0              system
GIMP (GNU Image Manipulation Program)              org.gimp.GIMP                                  2.10.20           stable           system
GNOME Application Platform version 3.36            org.gnome.Platform                                               3.36             system
elementary stylesheet                              org.gtk.Gtk3theme.elementary                                     3.22             system
bitwalk@elementary-pc:~$ flatpak run org.gimp.GIMP
Gtk-Message: 12:04:39.664: Failed to load module "atk-bridge"
Gtk-Message: 12:04:39.721: Failed to load module "canberra-gtk-module"
gimp_device_info_set_device: trying to set GdkDevice 'VirtualPS/2 VMware VMMouse' on GimpDeviceInfo which already has a device
Gtk-Message: 12:04:49.397: Failed to load module "atk-bridge"
Gtk-Message: 12:04:49.404: Failed to load module "canberra-gtk-module"
bitwalk@elementary-pc:~$ 
FlatHub からダウンロードした GIMP の実行例

デスクトップ環境での操作性を重視している割には、Flatpak へのサポートがまだ薄いように見えます。しかし、基本的なことを見落としているかもしれません。elementary OS での Flatpak の利用についてはひきつづき調べることにします。

ショートカット

キーボードの ⊞ Win を押下すると、ショートカットの一覧が表示されます。

キーボードのショートカット一覧

日本語入力

日本語を選択してインストールすると、最初から ibus と mozc が利用できるようになっています。「システム設定」を開いて「言語と地域」を選ぶと、インストール済み言語に日本語が設定されています。左下の キーボードの設定 ボタンをクリックすると、キーボードの設定ウィンドウに変わりますので、右下の インプットメソッドの設定 をクリックします。

すると、IBus の設定画面になります。Ctrl Space で Mozc が利用できるようになります。

例としてコードに日本語を入力している例を示しました。

コードで日本語を入力している例

マウスの中ボタン(スクロールボタン)

elementary OS のデスクトップ環境を使っていて気になったことは、むかしから X Window 系の操作で慣れ親しんできた中ボタン(スクロールボタン)を文字のペーストに使えません。以下のような話が以前からあるので、先取りした考え方なのかもしれません。

開発チームについて

elementary OS は Ubuntu や RHEL と同じく、企業が開発(あるいは支援)している Linux ディストロです。企業が倒産すればそのままディストロ存続の危機に直面しますので、このような場合、ひとまずどのような企業なのか調べるのですが、elementary LLC については判りませんでした。

しかし、開発チームが elementary OS のサイトで紹介されており、それを見ると、実にグローバルなメンバーで構成されていることに驚かされます。日本語のサイトもあるのですが、おそらく最新と考えられる英語サイトの内容が反映されていないように見えるので、英語のサイトを紹介します。

日本や韓国の方も参加されています。チーム全員が elementary LLC に雇用されているのかは判りませんが、それぞれの役割でいろいろな国から参加してひとつのディストリビューションを作りあげるということはとても素晴らしい事です。

インターフェースのガイドライン

elementary OS のインターフェイスは統一感があり洗練されている印象がありますが、それは下記のガイドラインに沿って開発されているからでしょう。今では GNOME などのデスクトップ環境では気にならなくなりましたが、昔はオープンソースの成果物をただ集めると、それぞれインターフェイスに対する考え方がことなるため、どうしても寄せ集め感が拭えませんでした。elementary OS は特に洗練された統一感があるユーザーインターフェイスの実現に成功しているように思えます。

今回は調べきれませんでしたが、Vala の開発環境を整備して使い心地を評価したいと考えています。

まとめ

項目 説明
ディストリビューション elementary OS
プロジェクトサイト elementary (GitHub)
デスクトップ環境 Pantheon(GNOME 3 ベース)
対応プラットフォーム x86_64
パッケージ管理 APT, deb
日本語入力 ibus-mozc
寸評

Ubuntu をベースにしているとは言え、デスクトップ環境およびコアアプリを独自開発したアプリで実装しており、見た目は全く別の Linux です。

オープンソースの世界でビジネスを続けていくことは難しく、持続的に収益を確保できる強力なビジネスモデルと積み上げた実力がどうしても必要になります。elementary 社は小さな会社なのでしょうが、珠玉のようなこのデスクトップ OS を持続的に公開し続けることを祈っています。

参考サイト

  1. 高速でオープンソース、プライバシーも尊重する、Windows や macOS の代わりになる OS ⋅ elementary OS
  2. elementary OS 5.1 Hera がリリース! - Ryo Nakano - Medium
  3. Sponsor @elementary on GitHub Sponsors

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