2020-06-25

Linux ディストロ探訪(16) 〜 CloudReady 〜

Linux とは本来 Linux カーネルのことを指しています。しかし、カーネルだけでは OS として動作させることはできません。そこで、OS に関連するツールやアプリケーションなどをまとめて、インストールし易く、インストール後にすぐ利用できるような配布形態にしたものを「ディストリビューション(略してディストロ)」と呼んでいます。

本シリーズ記事は、Linux ディストリビューションをピックアップ、仮想マシン(あるいは実機)にインストールして紹介します[不定期]。

CloudReady とは

CloudReady は、Google 社の Chromium OS をベースに Neverware 社が構築したオペレーティングシステムです。

CloudReady のデスクトップ画面

Chromium OS は、主にウェブアプリケーションと共に動作するよう Google 社により設計された Linux ディストリビューションであり、Chrome OS のオープンソース開発バージョンです。ソースコードからコンパイルするパッケージ管理システム Portage を使用している Gentoo Linux をベースにして開発されています。

Wikipedia より引用

Chromium OS はオープンソースでインストール方法も公開されていますが、他の Linux ディストロほどには単純ではありません。

それに比べると CloudReady は、Windows 上で USB イメージを作成して、ライブ OS として試すことができ、そのまま実機へのインストールもできるとのことで、とっても簡単そうだったので、試してみました。

なお、CloudReady を利用する(ログインする)には、Chromebook と同じく、Google のアカウントが必要になります。Chromebook に搭載されている Chrome OS 系の OS は、他の Linux ディストロのように、インストール時にユーザ・アカウントを作成するということをしません。

インストール

Cloud Ready には下記の三種類のエディションがあります。

  • Home ; 無料
    • 自宅などでプライベートな利用
  • Education : $20 / 年
    • 学校など教育現場での利用(別途、詳細なオプション有)
  • Enterprise : $49 / 年
    • 企業、官公庁などでのエンタープライズ用途

$ は米国ドルで、有償のエディションにはテクニカルサポートやセキュリティパッチなどのサービスが含まれています。

Neverware 社は、下記に認定ハードウェア (PC) のリストを掲載しています。リスト以外の PC でも問題なく動作する可能性はありますが、一部のデバイスに対応していない場合もあるので、自己責任でインストールを実施してください。

起動用 USB メモリの作成

ここでは Home Edition をダウンロードして起動用の USB メモリを作成します。

上記のサイトから USB Maker (cloudready-usb-maker.exe) をダウンロードしてインターネットにつながっている Windows 上で起動すると、Cloudready の Home Edition をダウンロードします。その後、起動可能なイメージで USB メモリへ書き込んでくれます。

フォーマットされた 8GB あるいは 16GB の容量の USB メモリをプログラムの起動前に PC の USB ポートに差し込んでおきましょう。

下記のような流れで起動用の USB メモリを作成します。

実機でライブ起動、そしてインストール

今回はインストールできる仮想環境がなかったので、Linux ディストロの評価に使っているテスト機 HP Stream 11-y004TU にインストールしました。作成した USB メモリを挿入し、USB メモリから起動するように BIOS の設定を変更して起動します。

言語やキーボードの設定をした後、Google のアカウントでログインします。ライブ OS で確認したところ、フツーに動いているようなので、本体 PC にインストールしてみることにしました。

本体 PC へのインストールは、メニューから「install OS」を選択します。

本体 PC へのインストールボタン

以下のような画面が現れ、INSTALL CLOUDREADYINSTALL HARD DRIVE & INSTALL CLOUDREADY ボタンをクリックすると、CloudReady のインストールが始まります。しばらくするとインストールが終了し、シャットダウンします。USB メモリを抜いて起動します。

ちなみに、インストールする PC は、いつも Linux ディストロ評価に使用しているので、不測の問題を回避するため、前にインストールされていたパーティション、フォーマットを GParted で削除してから、新しい OS をインストールするようにしています。

はじめての CloudReady

CloudReady は Chromium OS をベースとしている OS ですが、どこが Chromium OS と異なるのかが、調べても判りませんでした。ここではひとまず Chromium OS と同等だとみなすことにします。Chromebook に搭載されている Chrome OS と違うのは Google 固有の製品が含まれていないことです。

下記の Chromebook の使い方の大半は CloudReady にもあてはまるはずです。

そもそも Chromebook を使ったことが無いので、一応同じ機能として、CloudReady のデスクトップで気づいたことをまとめました。

ログイン後のデフォルト画面ではバーが画面下側にあり、その左側に「ランチャー」があります。以下のようにクリックするとアプリの一覧が表示されます。

ランチャーでアプリのリストを表示

表示されているアプリは主にウェブブラウザの Google Chrome あるいは Chromium のアプリの一部ですが、その他にも「ファイル」という Chromebook (CloudReady) 固有のアプリがあります。これはファイルブラウザで、ローカルの保存領域(マイファイル)とGoogle ドライブにアクセスできます。

ファイルブラウザ「ファイル」

画面右下の時刻のあたりをクリック、あるいは Alt + Shift + s を押下すると「ステータス領域」が表示されます。ギヤアイコンをクリックすると、設定画面が表示されます。

ステータス領域と設定画面(CloudReady のバージョン)

ショートカット

ショートカットの一覧は、Ctrl + Alt + / で表示されます。

ショートカット一覧

ちなみに、全画面のスクリーンショットは Ctrl + □|| で取得できるとありますが、Windows PC に CloudReady をインストールしているので、Chromebook とはキーボードが異なります。ファンクションキーのどれかに対応しているのだろうと見当を付けていろいろ試してみたところ、Ctrl + F5 でスクリーンショットを取得できることが判りました。

Linux(ベータ版)

Linux(ベータ版)は、Chromebook を使用してソフトウェアを開発できる機能です。CloudReady でも同様に利用できます。

「設定」にある「Linux(ベータ版)」

機能をオンにして使ってみます。「オン」にすると、下記のような画面が表示され、インストール をクリックするとインストールが始まります。まず仮想マシンがインストールされ、そのあとに Linux コンテナがインストールされます。

Linux のコンテナとしてインストールされたのは、Debian Linux 10 (buster) の amd64 版です。

「Linux」アプリのターミナル画面

apt が利用でき、パスワード無しの sudo で必要なものは自分でインストールできます。また、ちょっと確認した限りでは GUI プログラムが CloudReady のデスクトップ上で動くようです。

PyGObject の実行例

「ファイル」を起動すると、マイファイル内に「Linux ファイル」ができており、Linux アプリ内のアカウント内のファイルにアクセスできるようになっています。結構便利にできています。

「Linux」アプリインストール後の「ファイル」のマイファイル内

その他

既知の問題はいろいろあるようです。

まとめ

項目 説明
ディストリビューション CloudReady
プロジェクトサイト Neverware
デスクトップ環境 Chromebook のデスクトップ
対応プラットフォーム x86_64
パッケージ管理 (システムのビルドは Gentoo Linux のパッケージ管理システムである Portage を利用)
アプリのインストールやアップデートの機能はあるものの、CloudReady 上でユーザーが直接 Portage を使うようなパッケージ管理はない。
日本語入力 Google 日本語入力
寸評

Chromebook といえば、ブラウザ中心の OS で、Linux をベースにしていながら、Linux ユーザにとっては面白みが少ないだろうと思っていました。

しかし、CloudReady を使ってみて、Chromebook は意外と使える環境かもしれないと思うようになりました。どこにでも持ち歩くノート PC で必要となる用途、ゲームといった重い処理でなければ、いろいろと使えそうです。Linux を使いたければ Linux アプリを使えば良いのです。

参考サイト

  1. CloudReady – USBメモリから起動して使えるChrome OS(Chromium OS) を使ってみよう! [2020-04-13]
  2. Windows7がサポート終了したのでCloudReady(ChromeOS, ChromiumOS)を入れて再利用する - Qiita [2020-01-15]
  3. Windows PCにCloudReadyをインストールしてChromebookとして再利用する:中古PC活用 - @IT [2019-08-09]
  4. Chromebookでスクリーンショットを撮る方法!範囲指定もOK | KEIICHINISHIMURA.COM [2019-01-18]
  5. CloudReadyのインストール後にやっておきたいこと:3点 | Cloud-Work | 生産性向上
  6. CloudReady (クラウドレディ)|Chrome 端末|電算システム
  7. CloudReady Home - 無料ChromeOSのインストールと設定 | E.i.Z
  8. Chromebookで出来ること・魅力を3年間に5台のChromebookを購入したブロガーが徹底解説 - わたしのネット

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