Microsoft Windows のデスクトップは、タブレットでの利用を意識して Windows 8 のリリースで大きく変更 (Modern UI) されました。しかしユーザーの評判が芳しくなかったため短命に終わり、8.1 を経て、次の Windows 10 で「スタートメニュー」を伴った以前のスタイルのデスクトップが復活しました。
Windows 10 Home のデスクトップ画面
デスクトップ PC として四半世紀を越えてデファクトスタンダードとして君臨する Microsoft Windows ですから、当然 Linux のデスクトップ環境にも影響を与えています。
Windows 11 では UI が再設計されて、スタートメニューがアイコンボタンのみになり、デフォルトでタスクバーが画面下中央揃えで配置されるようになりました。しかし従来の Windows のデスクトップ環境のスタイルは依然として Linux など OSS のデスクトップ環境に引き継がれています。それだけ Windows のデスクトップ環境の影響が大きかったのだと言えるでしょう。
ここでは、Microsoft Windows 10 までのデスクトップと操作感が似ている Linux のデスクトップ環境をピックアップして紹介します。
中国が Windows や MacOS といった外国産 OS への依存を減らし、独自の PC 向け OS の開発を推進するために立ち上げたオープンソースコミュニティの Linux ディストロ openKylin[6]のデスクトップ環境にも UKUI が採用されていますが、こちらのディストロは中国語の言語圏向けで、日本語には親切ではないので、ここでは Ubuntu Kylin(优麒麟)をピックアップしました。
Linux をデスクトップ用途で長く利用する場合、そのデスクトップ環境に何を使うかはとても重要です。Windows と異なり Linux ではデスクトップ環境の選択肢がいくつもあります。デスクトップの操作感が Windows に似ていた方が使いやすいのであれば、そういったデスクトップ環境を選択すれば良いのです。
最近の Linux ディストロでは、ISO イメージをダウンロードする時点で、いくつものデスクトップ環境が選択できる場合があります。そうするとどれにするか迷ってしまう場合があるかもしれませんが、本記事の情報がそういうときの Linux ディストロやデスクトップ環境の選択の参考になるかもしれません。
MX Linux は、軽量 Linux ディストロの antiX とかつての MEPIS コミュニティとのベンチャープロジェクトで、各ディストロのベストなツールと才能を活用しています。エレガントで効率的なデスクトップと、シンプルな構成、高い安定性、安定したパフォーマンスで中規模のインストール容量になるように設計された中量級 OS です。Debian stable(安定板)をベースとしています。
MX Linux は、DistroWatch.com の Page Hit Ranking で長い間1位をキープし続けています。その魅力とはいったい何なのか、説得力ある理由を見つけられるかどうか判りませんが、インターネット上で出回っている評判を集めてみました。
Debian has been always near the top, mainly 2015-2016, and MX Linux is a somehow "easier Debian". Also, it aims to fit a "lower / older hardware" niche, for people in poor regions all around the world. So, we don't see so much talk about it, in our countries, but it is present in sites, blogs, forum's talk in other countries and languages.
【参考訳】
Debian は、主に 2015 年から 2016 年にかけて、常にトップに近い位置を占めていましたが、MX Linux は、いわば「より簡単な Debian」と言えます。また、世界中の貧しい地域の人々のために、「より安価な/古いハードウェア」のような特定分野にもフィットすることを目指しています。そのため、私たちの国ではあまり話題になりませんが、他の国や言語のサイト、ブログ、フォーラムでは話題になっています。
また、世界中の貧しい地域の人々のために、…の文脈がどこに掛かるのかよく判りませんでしたが、MX Linux が特別にそういったミッションを掲げているわけではなさそうです。ただ、他の回答の中にも、古い PC でもインストールできることを挙げている人が何人かいます。
※ おおむかし、自分が Linux を最初にインストールしたのは Slackware だったので、それに比べれば、今の Debian のインストーラはずいぶんと親切だとは思います。😅
MX-23 のインストール
上記、MX Linux のインストールのスクリーンショットは、キーボードレイアウトの設定のところで3枚もとってしまってはいますが、全体的にシンプルなインストールの流れです。デフォルトの設定のままで良ければ、設定しなければならない箇所は、キーボードのレイアウト、ロケール(言語)と時刻、アカウントの設定ぐらいです。
ZDNet の記事
IT 関連ニュースなどのサイト ZDNet で、MX Linux の人気について扱った記事がありました。
One aspect of MX Linux that appeals to me is that the flagship version (Xfce) looks and feels like old-school Linux but with just enough modernity to make it a viable option for today's users.
【参考訳】
MX Linux の魅力のひとつは、フラッグシップ・バージョン(Xfce)が昔ながらの Linux のようなルック&フィールでありながら、いまどきのユーザーにとって十分な現代的センスを備えていることだ。
old-school とは肯定的なニュアンスでは「昔ながら」とか「懐かしい」あるいは「伝統的スタイルの」という意味になりますが、昔ながらの Linux とは、コダシマさんが言われる「ちょうどよい Linux 感」と通じる部分があるのかもしれません。
氏は、MX Linux のユーザーマニュアルと FAQ がデスクトップにアイコンで表示されていることも特徴として挙げています。ロケールを日本語にすると、日本語版のマニュアルと FAQ を利用できるようになっているのはちょっとビックリです。コミュニティの力はすごいですね。
MX Linux ユーザーマニュアル
氏は、MX Linux の欠点は Debian stable をベースにしていることだと述べています。そして、インストールされているソフトウェアは、時代遅れではないが、どう考えても最新・最高のリリースではないことは確かだと言っています。
Linux 好きで最新の動向が気になる人達にとっては、最新のパッケージに触れることをディストロに期待するのでしょうが、大多数のユーザーにとって安定して手軽に使えることの方がずっと大切なのかもしれません。意外とエキスパートが考える欠点は、多くの人にとって長所だったりもします。
まとめ
なんとなく Red Hat Enterprise Linux や Ubuntu のような企業色を避ける個人が、企業色のない Debian を利用したいけれど、インストールがちょっと面倒だ。その結果、簡単にインストールでき、しかも安定して利用できる Debian 派生でコミュニティベースのディストロが MX Linux になるのかもしれない、そう考えました。しかし、他にも Debian 派生のディストロはたくさんあるだろうと、念のため Wikipedia で調べました。
Debian stable をベースにした、癖のなさそうな汎用ディストロというと、デスクトップ環境はカスタマイズされていると言っても、やはり MX Linux になってしまうのでしょうか。インストールも簡単ですし…。
※ Arch Linux と Manjaro との関係に似ているのかもしれませんが、リポジトリは別ですし、Manjaro は結構新しいパッケージを利用できます。
Linux のユーザーの大多数は新しい機能やパッケージを追い求めているわけではない、ということは容易に想像がつくのですが、それでも残念ながら、その1位である説得力ある理由を見つけられたとは言えません。カスタマイズの容易さなどは、少し使い込まないと判りませんし、どのぐらいコミュニティが活発なのかもひきつづき調べていきたいと思います。