Amazon のブラックフライデーのセールで逃した、AMD Ryzen 7 (5700G) を搭載したミニ PC (MINISFORUM Elitemini X500) を、損な買い方だと承知の上でセール終了後に買ってしまいました。やっぱり Ryzen 7 のパワーを体験してみたかったのでした。
店頭で実物を見て買うとなると逡巡する時間が長いのですが、Amazon のサイトでポチっとクリックするのは早いです。困ったことです。😅
格安 PC 買いがモットー
Intel 系 (x86, x86-64) の CPU を搭載した PC をメインにしてずっと使ってきましたが、そろそろ ARM 系を試したいとずっと思っていました。しかし、いわゆるワンボードコンピュータでない、ARM 系の CPU を搭載した筐体付きの魅力的な PC になかなか出会えません。
振り返ってみると、そろそろかなと思って Linux を 32bit から 64bit へ移行した時期 [1] は、AMD の Athlon 64 を搭載した PC を使っていました。その後、格安 PC を買いまくる路線に変更しました。CPU は Intel Atom とか Celeron という省電力、エントリーブランドのものばかりでした。要するに長く使える PC を買おうとすると高いので、変化の速い業界では、経済的な負担と新しいものへの興味を両立させるため、予算 5 万円未満の廉価な PC をある程度の頻度で買うというやり方を選んだのでした。
しかし、格安 PC に Linux をインストールしても非力すぎて、仮想環境を作って評価用に他の Linux をインストールすることができないので、2018 年末に Skynew の Intel i7-8550U を搭載したミニPC M4S を買ってメインの PC として使ってきました [2]。もちろん、既に買ってしまった格安 PC は古くなっても実機へのインストールテスト用に使い続けていますし、いまでも格安 PC を見つければ買ってしまうことがあります。
一方、Linux カーネルの生みの親である Linus Torvalds 氏が最近使っているワークステーションは、AMD Ryzen を搭載しているという記事 [3] を読み、Intel 系と同じ x86_64 の CPU であっても Ryzen 搭載の PC を使ってみたいものだと夢見ていました。
まず Windows でベンチマーク
前置きが長くなってしまいましたが、Amazon で買ったミニ PC MINISFORUM Elitemini X500 のスペックは下記のとおりです。
ブランド | MINIS FORUM |
製品名 | Elitemini X500 |
システム | Windows 10 Pro |
CPU ブランド | AMD Ryzen 5700G (3.8GHz, 8Core/16Thread, TDP/TDP 65W) |
RAM | 2 x 8GB DDR4 3200MHz デュアルチャネル (SODIMM Slots x 2) |
ストレージ | M.2 2280 512GB PCIe SSD (PCIe 4X サポート, 最大 2TB) |
拡張ストレージ | 1 x M.2 2242 SATA SSD (最大 2TB, SATA 3.0, 6.0Gb/s), 1 x 2.5 インチSATA HDD (SATA 3.0, 6.0Gb/s), 1 x TFカード (最大 128GB) |
ワイヤレス接続 | M.2 2230 WiFi サポート (WiFi6 AX200, BT5.1 プリインストール) |
有線接続 | RJ45 x 2 (1000M LAN) |
ビデオ出力 | ① HDMI (4K@60Hz), ② DisplayPort (4K@60Hz) |
オーディオ出力 | HDMI, DisplayPort, 3.5mm Audio Jack, HP OUT |
電源アダプター | DC 19V |
寸法・重量 | 15.3 x 15.4 x 6.2cm, 2.11kg |
Windows を使うつもりはないのですが、とりあえず致命的な不良品でないことを確認するためにも、プリインストールされている Windows を設定することにしています。せっかくですのでデータ収集のためにベンチマークも取っておきました。Linux でも同じようにベンチマークが取れる Geekbench をいつも使っています。
Fedora Linux 35 をインストール
Fedora Linux 35 (Server Edition) をインストールしました。ストレージが 512GB ありますので、当面、容量不足に悩まされることはないと思いますが、将来の拡張に備え、Workstation Edition のデフォルトのファイルシステム btrfs ではなくて、Server Edition の xfs にしてロジカルボリュームを管理することにしました。
以前は、Server Edition をインストールするときに GUI 環境を一緒にインストールできたように記憶していましたが、記憶間違いか、GUI 環境の選択ができませんでした。
仕方がないのでそのままインストールして、インストール後に
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo dnf group install "Fedora Workstation"
のように実行して Workstation Edition のパッケージをインストールしました。
また、ランレベルの設定について、systemd ではやったことがなかったので、参考サイト [4] を参考に、
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo systemctl set-default graphical.target
を実行しました。
これで再起動後に GDM でログインできるようになりました。
追記
デフォルトの条件でインストールした Fedora Linux 35 Server Edition は、ストレージの領域を 15GB しか確保していないことに、あとになって気が付きました。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ df -hT ファイルシス タイプ サイズ 使用 残り 使用% マウント位置 devtmpfs devtmpfs 6.8G 0 6.8G 0% /dev tmpfs tmpfs 6.9G 38M 6.8G 1% /dev/shm tmpfs tmpfs 2.8G 1.9M 2.8G 1% /run /dev/mapper/fedora_desktop--c80ethb-root xfs 15G 13G 2.5G 84% / tmpfs tmpfs 6.9G 2.5M 6.9G 1% /tmp /dev/nvme0n1p2 xfs 1014M 264M 751M 26% /boot /dev/nvme0n1p1 vfat 599M 6.1M 593M 2% /boot/efi tmpfs tmpfs 1.4G 120K 1.4G 1% /run/user/1000 [bitwalk@fedora-pc ~]$
vgdisplay コマンドでボリュームグループの詳細情報を表示します。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo vgdisplay [sudo] bitwalk のパスワード: --- Volume group --- VG Name fedora_desktop-c80ethb System ID Format lvm2 Metadata Areas 1 Metadata Sequence No 2 VG Access read/write VG Status resizable MAX LV 0 Cur LV 1 Open LV 1 Max PV 0 Cur PV 1 Act PV 1 VG Size 475.35 GiB PE Size 4.00 MiB Total PE 121690 Alloc PE / Size 3840 / 15.00 GiB Free PE / Size 117850 / 460.35 GiB VG UUID ExIryT-bI14-cnT5-Mea4-HpHe-slLt-joKC6x [bitwalk@fedora-pc ~]$
ボリュームグループは 475GB あまりあり、そのうち 15GB が割り当てられていることが判ります。lvdisplay コマンドで論理ボリュームを確認します。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo lvdisplay --- Logical volume --- LV Path /dev/fedora_desktop-c80ethb/root LV Name root VG Name fedora_desktop-c80ethb LV UUID t3bbDw-C2Zs-8G9Y-sreB-CZCP-LpXL-rxnd01 LV Write Access read/write LV Creation host, time fedora-pc, 2021-12-05 16:37:07 +0900 LV Status available # open 1 LV Size 15.00 GiB Current LE 3840 Segments 1 Allocation inherit Read ahead sectors auto - currently set to 256 Block device 253:0 [bitwalk@fedora-pc ~]$
lvextend コマンドで、残っている物理領域すべてを論理ボリュームに拡張しました。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo lvextend -l +100%FREE /dev/fedora_desktop-c80ethb/root
Size of logical volume fedora_desktop-c80ethb/root changed from 15.00 GiB (3840 extents) to 475.35 GiB (121690 extents).
Logical volume fedora_desktop-c80ethb/root successfully resized.
[bitwalk@fedora-pc ~]$
ボリュームのサイズは増えましたが、まだ利用できる論理ボリュームのサイズは増えていません。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo vgdisplay --- Volume group --- VG Name fedora_desktop-c80ethb System ID Format lvm2 Metadata Areas 1 Metadata Sequence No 3 VG Access read/write VG Status resizable MAX LV 0 Cur LV 1 Open LV 1 Max PV 0 Cur PV 1 Act PV 1 VG Size 475.35 GiB PE Size 4.00 MiB Total PE 121690 Alloc PE / Size 121690 / 475.35 GiB Free PE / Size 0 / 0 VG UUID ExIryT-bI14-cnT5-Mea4-HpHe-slLt-joKC6x [bitwalk@fedora-pc ~]$
xfs_growfs コマンドでファイルシステムを拡張します。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo xfs_growfs /dev/fedora_desktop-c80ethb/root
meta-data=/dev/mapper/fedora_desktop--c80ethb-root isize=512 agcount=4, agsize=983040 blks
= sectsz=512 attr=2, projid32bit=1
= crc=1 finobt=1, sparse=1, rmapbt=0
= reflink=1 bigtime=0 inobtcount=0
data = bsize=4096 blocks=3932160, imaxpct=25
= sunit=0 swidth=0 blks
naming =version 2 bsize=4096 ascii-ci=0, ftype=1
log =internal log bsize=4096 blocks=2560, version=2
= sectsz=512 sunit=0 blks, lazy-count=1
realtime =none extsz=4096 blocks=0, rtextents=0
data blocks changed from 3932160 to 124610560
[bitwalk@fedora-pc ~]$
lvdisplay コマンドで論理ボリュームが拡張されたことを確認します。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ sudo lvdisplay --- Logical volume --- LV Path /dev/fedora_desktop-c80ethb/root LV Name root VG Name fedora_desktop-c80ethb LV UUID t3bbDw-C2Zs-8G9Y-sreB-CZCP-LpXL-rxnd01 LV Write Access read/write LV Creation host, time fedora-pc, 2021-12-05 16:37:07 +0900 LV Status available # open 1 LV Size 475.35 GiB Current LE 121690 Segments 1 Allocation inherit Read ahead sectors auto - currently set to 256 Block device 253:0 [bitwalk@fedora-pc ~]$
最後に、df コマンドで利用できる領域が増えていることを確認します。
[bitwalk@fedora-pc ~]$ df -Th
ファイルシス タイプ サイズ 使用 残り 使用% マウント位置
devtmpfs devtmpfs 6.8G 0 6.8G 0% /dev
tmpfs tmpfs 6.9G 64M 6.8G 1% /dev/shm
tmpfs tmpfs 2.8G 1.9M 2.8G 1% /run
/dev/mapper/fedora_desktop--c80ethb-root xfs 476G 16G 460G 4% /
tmpfs tmpfs 6.9G 4.6M 6.9G 1% /tmp
/dev/nvme0n1p2 xfs 1014M 264M 751M 26% /boot
/dev/nvme0n1p1 vfat 599M 6.1M 593M 2% /boot/efi
tmpfs tmpfs 1.4G 120K 1.4G 1% /run/user/1000
[bitwalk@fedora-pc ~]$
以上、予期せぬストレージの容量不足にびっくりして、慌てて対応した顛末でした。😅
ベンチマーク
先述したように、Windows と Fedora Linux についてGeekbench 5 でベンチマークを取りました。
CPU の性能比較では、Linux の方がやや高くなっています。[比較]
# | Name | Platform | Architecture | Single-core Score | Multi-core Score |
11430246 | BESSTAR TECH LIMITED X500 AMD Ryzen 7 5700G 3801 MHz (8 cores) |
Windows 64 | x86_64 | 1490 | 8015 |
11431139 | BESSTAR TECH LIMITED X500 AMD Ryzen 7 5700G 4672 MHz (8 cores) |
Linux 64 | x86_64 | 1542 | 8234 |
一方、Compute の方は Windows の方がやや高くなっています。[比較]
# | Model | API | Platform | Compute Score |
3855240 | BESSTAR TECH LIMITED X500 AMD Radeon(TM) Graphics |
Vulkan | Windows 64-bit | 18542 |
3855495 | BESSTAR TECH LIMITED X500 AMD Radeon(TM) Graphics |
Vulkan | Linux 64-bit | 18452 |
ふだん、非力な CPU を搭載した格安 PC のベンチマークばかりを取っているので、このような桁違いの性能では Windows / Linux の差はほとんどないんだなぁと感じました。グラフィック性能 (Compute) の方は、専用のグラフィックボードを搭載しているものの方が凄いスコアを叩き出しているのかもしれませんが、格安 PC ばかり試す自分には別世界です。
性能については上には上がある、ということを重々判っているつもりですが、コストパフォーマンスを考えると、良い買い物をしたと思っています。
参考サイト
- bitWalk's: Fedora を i386 から x86_64 へ移行 [2008-04-12]
- bitWalk's: 【備忘録】Fedoraで論理ボリュームを追加する [2018-12-29]
- "Linuxの父"トーバルズ氏が評価するAMD、そしてインテル - ZDNet Japan [2021-01-09]
- Fedora 35 : Change Run-Level : Server World
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