Linux とは本来 Linux カーネルのことを指しています。しかし、カーネルだけでは OS として動作させることはできません。そこで、OS に関連するツールやアプリケーションなどをまとめて、インストールし易く、インストール後にすぐ利用できるような配布形態にしたものを「ディストリビューション(略してディストロ)」と呼んでいます。
本シリーズ記事は、Linux ディストリビューションをピックアップ、仮想マシン(あるいは実機)にインストールして紹介します[不定期]。
Solus とは
Solus /ˈsəʊləs/ は、独自に開発された、いわゆる独立系の Linux ディストリビューションで、プロジェクトサイトによるとホームコンピューティングのためにデザインされたシステムです。リリースはローリングリリースモデルを採用しています。
パッケージ管理は、 PiSi パッケージマネージャーから派生した eopkg という独自の方式を使っています。デスクトップ環境は、独自に開発された Budgie のほか、GNOME と MATE 版が用意されていて、KDE Plasma 版も提供されるようになるとの事です。
スローガンは、Install today. Updates forever.(今日インストールしよう、いつまでも更新できます)です。
仮想環境へのインストール
はじめに、仮想環境 (GNOME Boxes) に Solus をインストールした例を紹介します。
Solus Budgie の iso イメージ Solus-4.0-Budgie.iso を、参考サイト [1] からダウンロードして起動すると、ライブシステムが立ち上がります。
Windows 7 のようなデスクトップで、なかなか見た目が洗練されている印象を持ちましたが、とりあえずインストールへ進みます。画面左下のアイコン をクリックします。
インストール用のウィンドウが表示されます。最初に言語の選択画面で日本語 (Japanese) を選択しますが、インストーラの言語には反映されません。次に位置情報を求められますが "Find my location automatically." にチェック ☑ を入れて次へ進みます。
あとは、「キーボードのレイアウト」→「タイムゾーン」→「インストール先の指定」→「インストール先メディアの LVM や暗号化の指定」→「ホスト名の設定とブートローダー」→「ユーザーアカウントの設定(複数設定可能)」という流れで、インストール前の設定をします。
インストール前に設定した内容のサマリが表示されて、Install をクリックすると確認ダイアログが出ますので OK ボタンをクリックしてインストールを始めます。
インストールにはしばらく時間がかかります。
再起動後にログイン画面が出るので、設定したアカウントでログインします。
ログイン後、左下の をクリックするとアプリケーションがカテゴリ別に表示されます。表示が日本語になっていることを確認できます。
更新プログラムがあるというメッセージが画面右上に出るので、「ソフトウェアセンターを開く」をクリックして、インストール後最初の更新をしておきます。ここではセキュリティ更新のみならず、全て更新しています。
デスクトップ環境 Budgie とデフォルトのアプリケーション
デスクトップ環境 Budgie /ˈbʌdʒi/ は、Evolve OS という Linux ディストリビューションのデスクトップ環境として開発されました。この Evolve OS の名前が 2015 年 4 月に Solus へ変わってからも引き続きデスクトップ環境として採用されています。Budgie version 1 がリリースされたのは 2014 年 2 月のことですから、まだ比較的新しいデスクトップ環境です。本記事作成時点でのバージョンは 10.5 release 197 です。
Budgie は GNOME と同様に GTK 3 のライブラリを利用しており、GNOME との関係も密です。デスクトップの UI は異なるものの、GNOME との共通点が数多くあります。
さて、ログインした後、左下の ボタンをクリックして表示されるアプリケーションのカテゴリ/アプリケーションは、インストール後のカスタマイズをしていない状態で下記の通りです。
Linux を何に使うかによって、インストールされているアプリケーションに過不足が生じますが、平均的なデスクトップユースを想定しているのであれば、まずまずではないでしょうか。(有り得ないことですが)自分がプログラミング関係のソフトウェアを除いた用途にこの PC を使うのであれば、あと GIMP を追加でインストールする程度で概ね十分であるように思います。
日本語入力の設定
Solus をインストールするときに使用する言語を「日本語」(Japanese) に設定すると、インストール後にメッセージの多くが日本語で表示されるよう人なりますが、日本語入力はインストール後に設定する必要があります。Solus では インプットメソッドフレームワーク IBus が利用できるようになっており、日本語入力システムは、唯一 Anthy が利用できます。
Solus で日本語入力および変換をできるようにするには、次のようにします。
まず、画面左下の ボタンをクリックして、「その他」→「IBus の設定」を選択して起動します。
「IBus の設定」画面で 「入力メソッド」タブをクリックして表示し、右側の 追加 (A) ボタンをクリック、「日本語」を追加して、閉じる (C) ボタンのクリックでウィンドウを閉じます。
次に、日本語入力システム Anthy をインストールします。画面左下のアイコン をクリックして「ソフトウェアセンター」を起動して、ウィンドウ左側の「検索」タブをクリックして表示し、Anthy を検索して関連するソフトウェアと一緒にインストールします。
インストールした日本語入力システムをでストップ環境に反映させるため、一旦ログアントしてログインし直します。
最後に、設定で入力ソースに Anthy を加ます。画面左下の ボタンをクリックして、「システムツール」→「設定」を選択して起動します。ウィンドウ左側の「地域と言語」タブをクリックして表示させ、入力ソースに「日本語(Anthy)」を追加します。
これで日本語入力ができるようになりましたが、ひとつ問題があります。それは、現在の入力ソースが何になっているか判らないことです。つまり、下記の GNOME の画面上に表示されるバーにある入力ソースの状態を示すアプレットが Budgie にはいまのところ無いのです。
例えば、 →「アクセサリ」→「テキストエディター」を選択して起動して日本語を入力してみます。
最初に入力した test は英字のままなので。入力ソースはおそらく「日本語」のままです。⊞ Win + Space とタイプして「日本語(Anthy)」に変更します。tesuto と入力して てすと と表示されすことを確認できれば、Space をタイプして テスト と変換できるでしょう。
半角/全角 漢字 キーをタイプ後、再び入力して半角アルファベットに入力が変更されていることを確認します。
インプットメソッドを必要としない言語を使う人達で開発したシステムですので、インプットメソッドを必要とする箇所で不具合があるのは仕方がないかもしれません。
この Linux ディストリビューションを気に入った方が、Solus のプロジェクトに参加して、リクエストを出し続けることで事態は良い方向に向かうかもしれません。もちろん、自分でプログラミングをして機能の実装を提案することもできます。使いたい人が使いたい機能を実現していける、それがオープンソースによる開発の良いところです。プロジェクトに興味のある人が開発に参加することが歓迎される世界ですが、誰かが実装してくれることを気長に待つ、不便なシステムは使わない、という選択もアリです。
パッケージ管理
Solus は eopkg という独自のパッケージ管理システムを採用しています。このシステムは、トルコ政府で使うことを想定して開発された Pardus という Linux ディストリビューション用に開発された PiSi /ˈpiːsiː/ と呼ばれるパッケージ管理システムをベースとしています。Solus の前身 Evolve OS の名前から eopkg と名付けられ、そのまま Solus に採用および開発が続けられているようです。参考資料 [3] より、eopkg のコマンドの使い方をまとめました。
コマンド | 説 明 |
---|---|
sudo eopkg install packagename | パッケージ packagename をインストール |
sudo eopkg install --reinstall packagename | パッケージ packagename を再インストール |
sudo eopkg remove packagename | パッケージ packagename をアンインストール(削除) |
sudo eopkg info packagename | パッケージ packagename の情報を取得 |
sudo eopkg upgrade ?packagename? | パッケージ packagename を更新。packagename を省略した場合は全てを更新。 |
sudo eopkg search term | 語 term に関連するパッケージを検索 |
→「システムツール」→「端末」を選択・起動して、端末エミュレータ上で eopkg コマンドを使った例を示しました。
bitwalk@solus-pc ~ $ sudo eopkg info budgie-desktop
パスワード:
Installed package:
Name : budgie-desktop, version: 10.5, release: 197
Summary : Budgie Desktop is the flagship desktop experience
developed by the Solus team.
Description : Budgie Desktop is the flagship desktop experience
developed by the Solus team.
Licenses : GPL-2.0-only, LGPL-2.1-only
Component : desktop.budgie
Dependencies : ibus mutter polkit libgnome-menus libnotify pango
util-linux libglvnd libwnck gobject-introspection
gnome-bluetooth libgtk-3 libcairo alsa-lib glibc libx11
libgnome-desktop pulseaudio libpeas gdk-pixbuf upower
glib2 gnome-session gnome-settings-daemon
gnome-screensaver
Distribution : Solus, Dist. Release: 1
Architecture : x86_64, Installed Size: 3.71 MB
Reverse Dependencies: budgie-screenshot-applet budgie-desktop-branding
Package found in Solus repository:
Name : budgie-desktop, version: 10.5, release: 197
Summary : Budgie Desktop is the flagship desktop experience
developed by the Solus team.
Description : Budgie Desktop is the flagship desktop experience
developed by the Solus team.
Licenses : GPL-2.0-only, LGPL-2.1-only
Component : desktop.budgie
Dependencies : ibus mutter polkit libgnome-menus libnotify pango
util-linux libglvnd libwnck gobject-introspection
gnome-bluetooth libgtk-3 libcairo alsa-lib glibc libx11
libgnome-desktop pulseaudio libpeas gdk-pixbuf upower
glib2 gnome-session gnome-settings-daemon
gnome-screensaver
Distribution : Solus, Dist. Release: 1
Architecture : x86_64, Installed Size: 3.71 MB, Package Size: 665.00 KB
Reverse Dependencies: vala-panel-appmenu-budgie-desktop
budgie-screenshot-applet budgie-calendar-applet
budgie-haste-applet budgie-desktop-branding
budgie-desktop-dbginfo budgie-shutdown-timer
budgie-desktop-devel budgie-trash-applet
budgie-desktop package is not found in source repositories
bitwalk@solus-pc ~ $
eopkg によるパッケージ管理は、使いこまないと良いも悪いも判断出来ませんが、少なくともコマンドの使い方は平易で好感が持てます。
実機へのインストール
ダウンロードした iso ファイルを Fedora Media Writer で USB メモリ (8GB) にイメージを焼いて、テスト機に使用している HP Stream 11-y004TU にインストールしました。特に問題なくインストールできました。
この PC は Celeron N3050 という 2015 年前半に出回り始めた 14nm (Braswell) 世代の、格安 PC によく採用された CPU を搭載しています。
参考までに、インストールした後、GIMP や R および最低限の GCC のコンパイル環境などをインストールしたあとのストレージの使用状況を下記に示しました。これでもまだ 32GB のうち 20GB 程度の容量が残っています。
bitwalk@solus-pc ~ $ df -h ファイルシス サイズ 使用 残り 使用% マウント位置 devtmpfs 1.9G 0 1.9G 0% /dev tmpfs 1.9G 0 1.9G 0% /dev/shm tmpfs 1.9G 1.4M 1.9G 1% /run tmpfs 1.9G 0 1.9G 0% /sys/fs/cgroup /dev/mmcblk0p3 28G 6.2G 20G 24% / tmpfs 1.9G 580K 1.9G 1% /tmp tmpfs 386M 92K 385M 1% /run/user/1000 bitwalk@solus-pc ~ $
まとめ
項目 | 説明 |
---|---|
ディストリビューション | Solus |
プロジェクトサイト | Home | Solus |
デスクトップ環境 | Budgie, GNOME, MATE |
対応プラットフォーム | amd64 (x86-64) |
パッケージ形式 | eopkg |
日本語入力 | Ibus - Anthy |
寸評 |
2015 年 12 月末に最初のバージョンがリリースされた Solus は、ホームコンピューティング用途に開発されました。独自に開発された Badgie という、洗練されたデザインのデスクトップ環境が利用できます。パッケージ管理は eopkg という、これもまた独自なシステムを採用しています。後発のディストリビューションで小規模ですが、独自路線を維持しながら永続的に発展し続けるか注視していきたいです。 |
参考サイト
- Download | Solus
- ホームユーザー向けLinuxディストリビューション「Solus 4」リリース | OSDN Magazine
- Basics to Package Management | Solus Help Center
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