KaOS は デスクトップ用途の Linux ディストリビューションで、最新バージョンの KDE デスクトップ環境、Qt ツールキットを使用するその他の一般的なソフトウェアアプリケーションを搭載しています。
KaOS とは
プロジェクトサイトの説明によると、KaOS は A Lean KDE Distribution.(リーン KDE ディストリビューション)を標榜する独立系 Linux ディストロです。
Lean(リーン)とは、「リーン生産方式」のように「ムダを徹底的に排除した~」という意味に使われます。KaOS にあてはめると、KDE を集中して利用するために、関係のないライブラリ(例えば GTK)を削ぎ落としているという意味になるでしょうか。
具体的には KaOS は、一つのデスクトップ環境 (KDE)、一つのツールキット(Qt)、一つのアーキテクチャ(x86_64)に焦点をあてた Linux ディストロです。プロジェクトのすべての作業はパッケージングに向けられていて、KaOS 独自の新しいツールやアプリケーションを開発することではありません。
なお、GTK ライブラリを使用しているアプリケーションも利用可能ですが、KaOS のリポジトリで利用できるものは限定的です。逆に考えると、やろうと思えば GTK フリーな Linux 環境を KaOS で実現できそうです。
KaOS はゼロから構築されたディストリビューションで、パッケージは可能な限り単純化して分割を避けています。パッケージの管理ツールには Arch Linux の pacman が採用されています。KaOS の ISO イメージは、ファイル名に配布年月を付けて毎年配布されているようですが、ローリングリリースモデルを採用しているので、適切にパッケージの更新をしていれば、アップグレードのために再インストールをする必要はありません。
インストール
下記の KaOS から iso イメージ KaOS-2024.03-x86_64.iso をダウンロードして GNOME Boxes の仮想環境にインストールしました。
別に GTK が嫌いということではありませんが、今回は「GTK フリー」な Linux というものに注目しています。
ISO イメージを読み込むと、最初に Welcome 画面が表示されます。
KaOS のライブ起動前に、 F2 で言語設定、 F3 で画面の解像度を設定しておきます。
KaOS のライブ OS が起動すると、Welcome(ようこそ)画面が表示されます。「KaOS をインストール」をクリックしてインストールを開始します。
なお、GNOME Boxes では、日本語は反映されましたが、画面の解像度は反映されませんでした。実機にインストールする場合には問題にならないかもしれません。
インストーラは Calamares をベースにしているようです。
言語は「日本語」になっているので、右側の Next をクリックして次へ進みます。
タイムゾーンが日本、システム言語、ロケールが日本語になっているので、そのまま右側の Next をクリックして次へ進みます。
キーボードのレイアウトの設定画面では日本語レイアウトになっているので、そのまま右側の Next をクリックして次へ進みます。
オフィススイートのインストールは、今回は「最小インストール」を選択しました。LibreOffice は GTK ライブラリに依存しているので、とりあえず避け、他のアプリも良く判らなかったためです。
右側の Next をクリックして次へ進みます。
マルチメディア関係のライブラリはデフォルトのままの Pipewire として、右側の Next をクリックして次へ進みます。
ストレージ領域はディスクの消去を選択し、そのまま右側の Next をクリックして次へ進みます。
ブートの設定はデフォルトの GRUB を使用する設定のままで右側の Next をクリックして次へ進みます。
ユーザーアカウントの情報を設定して、右側の Next をクリックして次へ進みます。
インストールの概要が表示されます。
右側の Next をクリックすると、最終確認のダイアログが表示されるので Install Now ボタンをクリックしてインストールを開始します。
インストールが完了するまで待ちます。
「すべて完了しました。」のメッセージが表示されるので、システムの再起動 ボタンをクリックして再起動します。
起動画面が表示されます。
SDDM のログイン画面が表示されるので設定したパスワードを入力して Enter でログインします。
インストールされたパッケージを sudo packman -Syu で更新後に KDE Plasma 6 のバージョンを確認しました。[2024-03-17]
gtk を含むパッケージがインストールされていないか確認したところ、ヒットしたのは breeze-gtk というパッケージだけでした。
このパッケージは KDE Plasma のデフォルトのスタイル Breeze に合わせて作られた GTK 用のスタイルで、GTK ライブラリに関連するバイナリではありません。簡単な確認ですが、おそらくは KaOS の最小インストールは GTK フリーの状態です。
日本語入力用のインプットメソッド
表示は概ね日本語になっていますが、日本語変換のためのインプットメソッドが設定されていません。
日本語入力環境の設定は、参考サイト [1] を参考にさせていただきました。ただし、Mozc 本体を利用できなかったので Anthy を使えるようにした例を紹介しています。
bitwalk ~ sudo pacman -S fcitx-anthy fcitx-qt6 パスワード: 依存関係を解決しています... 衝突するパッケージがないか確認しています... パッケージ (9) 新しいバージョン 最終的な変化 ダウンロード容量 main/anthy 9100h-6 23.58 MiB 5.29 MiB main/clang 17.0.6-1 216.79 MiB 44.96 MiB main/compiler-rt 17.0.6-1 31.95 MiB 2.55 MiB main/enchant 2:2.6.7-1 0.20 MiB 0.05 MiB apps/fcitx 4.2.9.9-5 34.60 MiB 7.84 MiB apps/fcitx-qt5 1.2.7-11 0.65 MiB 0.17 MiB main/opencc 1.1.7-1 3.91 MiB 0.88 MiB apps/fcitx-anthy 0.2.4-2 0.48 MiB 0.14 MiB apps/fcitx-qt6 1.2.7-8 0.24 MiB 0.08 MiB 合計ダウンロード容量: 61.97 MiB 合計インストール容量: 312.41 MiB :: インストールを行いますか? [Y/n] y :: パッケージを取得します... clang-17.0.6-1-x86_64 45.0 MiB 4.80 MiB/s 00:09 [------------------------------------] 100% ... (途中省略) ... :: トランザクション後のフックを実行... (1/2) Updating the desktop file MIME type cache... (2/2) Updating the MIME type database... bitwalk ~
次に、/etc/environment を編集します(以下の赤字の部分)。
bitwalk ~ sudo vi /etc/environment # # This file is parsed by pam_env module # # Syntax: simple "KEY=VAL" pairs on separate lines # #GTK_IM_MODULE=fcitx QT_IM_MODULE=fcitx XMODIFIERS=@im=fcitx
しばらく、GTK フリーで使ってみたいので、敢えて GTK_IM_MODULE=fcitx はコメントアウトしています。
再起動後、漢字 キーで日本語インプットメソッドが利用できることを KWrite 上で確認できました。
アプリケーション
KaOS を最小インストールしたので、アプリは KDE Plasma / Gear 関連のものが中心になっています。
インターネット・ブラウザ
KaOS は、デフォルトのインターネットブラウザに Qt6 の WebEngine を利用している Falkon を採用しています。
KDE プロジェクトがリリースしている KDE neon のデフォルトのブラウザは Firefox ですが、Firefox が GTK ライブラリに依存しているために KaOS では採用していません。なかなか徹底していますね。
まとめ
項目 | 説明 |
---|---|
ディストリビューション | KaOS |
プロジェクトサイト | https://kaosx.us/ |
デスクトップ環境 | KDE Plasma |
対応プラットフォーム | x86_64 |
パッケージ形式 | pacman |
日本語入力 | fcitx-anthy |
特記事項 | A Lean KDE Distribution.(リーン KDE ディストリビューション)を標榜する独立系 Linux ディストロです。 |
寸評 |
ユーザー側からすれば、GNOME や KDE Plasma などデスクトップ環境には好みがあるけど、アプリでは GTK や Qt ライブラリに関係なく、使いたいものを利用できさえすればそれで良い、という考えが大半なのかもしれません。そんな中で KDE デスクトップ環境 / Qt ライブラリにフォーカスしている KaOS は稀有なディストロのように思います。 自分は、Qt ライブラリの Python バインディングである PySide を頻繁に利用しているので、KaOS のような Qt に積極的にフォーカスしているディストロをもっと評価してみるべきかもしれないと思うようになりました。 |
参考サイト
- KaOS 2023.04 をインストールしました | INSUKO.NET [2023-04-23]
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